弁護士によるセクハラ・パワハラ事案への業界目線
弁護士の不祥事として、近年、注目されていたのは、弁護士による依頼者の預かり金着服や、事件の放置といった業務に関連した違法、不当な行為です。そして、これらについては、前者は弁護士の経済的な困窮、後者はそれとも関連する形の弁護士のメンタルの問題といった、司法改革の失敗が色濃く反映しているととらえることもてきました。
もちろん、その関連性をもってして、それらの不祥事が起こり得る言い訳にはなりません。司法改革が悪く、不祥事弁護士は悪くないとはならず、それが「逆境」であったとしても、それに負けない弁護士でなければならいし、当然社会もそれを求めるはずです。資質としての不的確性が、「逆境」によって炙り出されただけ、という人もいて当然です。
しかし、変な言い方になりますが、ある意味、同業者からみて、困った同業者であったとしても、少なくともその事件発生の因果関係については、理解の範疇にあるという印象を持ちます。
誤解されないようにしなければなりませんが、顧客のカネに手をつけることそのものへの理解ではなく、「改革」後の弁護士の事務所運営の困難さや、若手の困窮を知っている同業者からすれば、その先の悪い結果は、彼らの中で結び付けやすい。そして、そうだとすれば、何らかの対策を視野に入れることも、そこまで遠い話ではないようにもとれたということです。
ここ数週間、これとは全く異質の弁護士の不祥事報道に、多くの弁護士が衝撃を受け、困惑しています。メディアにも大きく取り上げられた、演劇界のセクハラ撲滅の旗手とされた弁護士によるセクハラでの被害者からの提訴、自殺した女性弁護士への性被害認定で元弁護士会長へ賠償命令という二つのニュースです(弁護士ドットコムニュース、朝日新聞デジタル)
あくまで現段階で報じられている事実関係に基づけばという話ですが、当然、弁護士にあるまじき行為という以上に、その職業的性格に対する社会的信頼への裏切り度は極めて大きく、弁護士の社会的イメージを決定的に棄損するものになることは間違いありません。
そして、前記同業者の受けとめ方からすると、その衝撃に加え、あえて困惑と書いたように、この事態をどのように受けとめるべきかについて、いまだ定めきれていないようにとれるところがあるのです。
両案件とも共通しているのは、弁護士によるセクハラである同時に、優越的地位を利用したパワハラの性格を帯びているところです。多少語弊があるかもしれませんが、これまで弁護士のセクハラ、パワハラの案件に、同業者がどういう目線を送ってきたかといえば、それをあくまで対外的には、前者についてはあくまで資質の問題として、業界内に紛れ込んだ異物として、後者については、度が過ぎたプロ意識や親弁の問題ある「個性」につなげるなど、極力枠に押し込める扱いだった印象を持ちます。
つまりは、若干矛盾するような感じもしますが、普通に社会に起こり得るようなこの手の不祥事が、弁護士にも生まれているが、極力それが業界の体質的な問題とは結び付けられない形に落ち着かせる。つまり弁護士も手を染める意味で特殊・例外的な扱いはできないが、あくまで弁護士としては異物であることを強調したい意図が先に立っているというニュアンスです。
しかし、今回の二事例に関しての反応は、それを上回っているようにとれます。もちろん、それがセクハラ対策の当事者であったり、弁護士会会長経験者である裏切り度、ギャップは、社会的反応以上に、弁護士に衝撃を与えたといえますが、ことここに至って弁護士会に巣食う体質的な問題として見なければならないのではないか、という空気が生まれつつある。
もっといってしまえば、セクハラもパワハラも、この業界に実は、ずっと存在してきていながら、自分たちが実は前記捉え方に流れるなかで、いわば見て見ぬふりをしてきたのではなかったかという自問が、同業者の中で起こり始めているということです。
弁護士によるハラスメントについて、日弁連、弁護士会が全く対応してこなかったわけではなく、相談窓口は既に設置されてもいます(日本弁護士連合会、神奈川県弁護士会、第二東京弁護士会)。しかし、現実的に、それが十分に機能しているのかについては、弁護士の中にも異論があります。
また、こうした不祥事全般を、旧司法試験世代のものととらえる見方もあり、今回の事案でも、すかさず新法曹養成制度の正当性、妥当性と結び付ける向きもあります。ただ、不祥事の当事者がいかに旧世代に属しているからといって、新制度の実績からそれが現実的に有効であるかのような見方も、極端な描き方のようにみえます。
今回の事案の衝撃が、体面としては決して容易でないこの世界の体質的構造的な観点に踏み込む、新たな気運のきっかけになるのかどうかが注目されるところではあります。
今、必要とされる弁護士についてご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/4806
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もちろん、その関連性をもってして、それらの不祥事が起こり得る言い訳にはなりません。司法改革が悪く、不祥事弁護士は悪くないとはならず、それが「逆境」であったとしても、それに負けない弁護士でなければならいし、当然社会もそれを求めるはずです。資質としての不的確性が、「逆境」によって炙り出されただけ、という人もいて当然です。
しかし、変な言い方になりますが、ある意味、同業者からみて、困った同業者であったとしても、少なくともその事件発生の因果関係については、理解の範疇にあるという印象を持ちます。
誤解されないようにしなければなりませんが、顧客のカネに手をつけることそのものへの理解ではなく、「改革」後の弁護士の事務所運営の困難さや、若手の困窮を知っている同業者からすれば、その先の悪い結果は、彼らの中で結び付けやすい。そして、そうだとすれば、何らかの対策を視野に入れることも、そこまで遠い話ではないようにもとれたということです。
ここ数週間、これとは全く異質の弁護士の不祥事報道に、多くの弁護士が衝撃を受け、困惑しています。メディアにも大きく取り上げられた、演劇界のセクハラ撲滅の旗手とされた弁護士によるセクハラでの被害者からの提訴、自殺した女性弁護士への性被害認定で元弁護士会長へ賠償命令という二つのニュースです(弁護士ドットコムニュース、朝日新聞デジタル)
あくまで現段階で報じられている事実関係に基づけばという話ですが、当然、弁護士にあるまじき行為という以上に、その職業的性格に対する社会的信頼への裏切り度は極めて大きく、弁護士の社会的イメージを決定的に棄損するものになることは間違いありません。
そして、前記同業者の受けとめ方からすると、その衝撃に加え、あえて困惑と書いたように、この事態をどのように受けとめるべきかについて、いまだ定めきれていないようにとれるところがあるのです。
両案件とも共通しているのは、弁護士によるセクハラである同時に、優越的地位を利用したパワハラの性格を帯びているところです。多少語弊があるかもしれませんが、これまで弁護士のセクハラ、パワハラの案件に、同業者がどういう目線を送ってきたかといえば、それをあくまで対外的には、前者についてはあくまで資質の問題として、業界内に紛れ込んだ異物として、後者については、度が過ぎたプロ意識や親弁の問題ある「個性」につなげるなど、極力枠に押し込める扱いだった印象を持ちます。
つまりは、若干矛盾するような感じもしますが、普通に社会に起こり得るようなこの手の不祥事が、弁護士にも生まれているが、極力それが業界の体質的な問題とは結び付けられない形に落ち着かせる。つまり弁護士も手を染める意味で特殊・例外的な扱いはできないが、あくまで弁護士としては異物であることを強調したい意図が先に立っているというニュアンスです。
しかし、今回の二事例に関しての反応は、それを上回っているようにとれます。もちろん、それがセクハラ対策の当事者であったり、弁護士会会長経験者である裏切り度、ギャップは、社会的反応以上に、弁護士に衝撃を与えたといえますが、ことここに至って弁護士会に巣食う体質的な問題として見なければならないのではないか、という空気が生まれつつある。
もっといってしまえば、セクハラもパワハラも、この業界に実は、ずっと存在してきていながら、自分たちが実は前記捉え方に流れるなかで、いわば見て見ぬふりをしてきたのではなかったかという自問が、同業者の中で起こり始めているということです。
弁護士によるハラスメントについて、日弁連、弁護士会が全く対応してこなかったわけではなく、相談窓口は既に設置されてもいます(日本弁護士連合会、神奈川県弁護士会、第二東京弁護士会)。しかし、現実的に、それが十分に機能しているのかについては、弁護士の中にも異論があります。
また、こうした不祥事全般を、旧司法試験世代のものととらえる見方もあり、今回の事案でも、すかさず新法曹養成制度の正当性、妥当性と結び付ける向きもあります。ただ、不祥事の当事者がいかに旧世代に属しているからといって、新制度の実績からそれが現実的に有効であるかのような見方も、極端な描き方のようにみえます。
今回の事案の衝撃が、体面としては決して容易でないこの世界の体質的構造的な観点に踏み込む、新たな気運のきっかけになるのかどうかが注目されるところではあります。
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