「有識者」という人たちの弁護士評価
「有識者」とよばれる方々のご発言には、時々驚かされることがあります。正確に言うと、ここでいっている「有識者」とは、政府が「有識者」として集めた方々のことです。
とりわけ、司法、その中でも、弁護士に対する評価、あるいは認識では、えー?と思うものによく出会う感じがします。
最近もありました。総務省が、総務大臣政務官主宰で、昨年5月から、法曹養成制度の政策評価の在り方を検討するために、有識者を集めて開催してきた研究会が昨年12月、報告書を公表しました。
この報告書の内容としては、司法試験年間合格3000人の未達成だとか、法科大学院修了7、8割合格のはずの新司法試験の合格率が年々減少、平成22年度は25.4%だとか、多様な人材確保のはずが、同年度の実績で法学部以外の人の占める割合は、法科大学院入学者の21.1%、合格者の19.0%だとか、要するに誤算だらけの今回の「改革」でできた新法曹養成制度・司法試験制度の実態を確認。司法制度改革審議会が出した、ご存知改革の「バイブル」、最終意見書を度々引用し、それと実態とのズレを指摘しているのはいいのですが、まあ、その路線で「なんとかせねば」というスタンスに読めます。
この意見書に添付されているヒヤリングに臨んだ方々の意見には、貴重な指摘もあるのですが、全体的な内容自体はひとまずおいて、ここで言いたいのは、「有識者」委員の方々のご意見の方です。この研究会にも、ジャーナリスト、学者、銀行の法務部長が「有識者」として参加されています。
委員の発言でも、それこそ以前も書きました、今回の「改革」が、この国の法的ニーズの受け皿を弁護士以外の、いわゆる「隣接士業」を含めた総体でとらえないで法曹人口の論議がなされてきた点や、急激な増員の影響について、きちっと指摘した委員の意見もあるにはありました。
ところが、弁護士関連となると、こんな見解が飛び出します。
「法曹人口問題は、見方を変えれば、政府と敵対できる法律家はどれぐらいに抑えるべきかという議論でもある」
「法曹人口の増加による質の低下等の問題は、弁護士について言われているのではないか。裁判官、検察官は、成績上位者から採用すればよいので、法曹人口が拡大しても実害がそれほど直接は感じられないと思われる」
「一つの割り切りとして、弁護士の資格は上位3,000 人の方には与えましょう、ただし、全員が弁護士として食っていけるかどうかは別ですよという考え方はなかったのか」
まあ、これが居酒屋での世間話なら目くじらをたてることもないでしょう。あるいは、弁護士の中でも、「有識者といったっていろいろな奴がいるさ」と言ってしまう寛大な方もいるかもしれません。
ただ、そうではありません。歴とした政府の研究会です。さすがに日弁連も、今月25日に出した、この報告書に対する意見書の中で、委員の中のこうした弁護士の役割、法曹三者に必要な能力について「理解されていないと思われる意見」に懸念を表明、「くれぐれもかかる誤った認識を前提と」してくれるな、と忠告しました。
そもそも有識者方式は、あまり評判はよくありません。専門家の方々をお招きして、ご意見を拝聴して、国の政策に反映させようというのだから、誠に殊勝、結構なこと、といった筋書きですが、そうでもありません。
悪評について、おえておさらいすれば、要するに、「有識者」とされた方々は、もともと政府の「応援団」の方々が多く、結果は推して知るべし、「出来レース」ではないか、という指摘です。言い換えれば、「有識者」の肩書を利用した国民懐柔策ではないか、ということです。いわゆる審議会よりも難問が設定され、結局、行政・政治の都合で、議論の中身が最終的に骨抜きになる傾向を指摘する人もいます。人選の基準のあいまいさ、メンバーの偏りといった問題もいわれます。
それでも、多数意見に対して、その問題性を指摘する少数意見が提示される意義をいわれる方もいます。ただ、これはやや虚しい。会議の設置目的が前者のものである以上、「それでは設置の意味がない」と当局者は考えるからです。ましてのちに実施される意見公募の中身が、どれだけ最終的に反映されるかは、要チェックです。
それにしても、今回の研究会に限らず、どうも弁護士に関することとなると、こうした会議の委員からは、ときどき驚く意見が飛び出す傾向があるように思えるのはなぜでしょうか。司法改革をめぐる議論では、たびたび登場しました。
別に弁護士に特別に寛大な意見や甘い見方を提示する必要は、もちろんありません。ただ、極端にねじ曲がった見方は、それこそ日弁連が懸念するように、そのまま何らかの形で政策の方向性に反映する可能性はあります。それを含めて、「出来レース」ならば、さらに大問題であることはいうまでもありません。
なんとなく弁護士に厳しい意見が、世間に受け入れやすいムードが既にできているのかもしれません。ただ、その意見の向こうにあるものが、市民のためになるかどうかは、それこそ要チェックです。

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最近もありました。総務省が、総務大臣政務官主宰で、昨年5月から、法曹養成制度の政策評価の在り方を検討するために、有識者を集めて開催してきた研究会が昨年12月、報告書を公表しました。
この報告書の内容としては、司法試験年間合格3000人の未達成だとか、法科大学院修了7、8割合格のはずの新司法試験の合格率が年々減少、平成22年度は25.4%だとか、多様な人材確保のはずが、同年度の実績で法学部以外の人の占める割合は、法科大学院入学者の21.1%、合格者の19.0%だとか、要するに誤算だらけの今回の「改革」でできた新法曹養成制度・司法試験制度の実態を確認。司法制度改革審議会が出した、ご存知改革の「バイブル」、最終意見書を度々引用し、それと実態とのズレを指摘しているのはいいのですが、まあ、その路線で「なんとかせねば」というスタンスに読めます。
この意見書に添付されているヒヤリングに臨んだ方々の意見には、貴重な指摘もあるのですが、全体的な内容自体はひとまずおいて、ここで言いたいのは、「有識者」委員の方々のご意見の方です。この研究会にも、ジャーナリスト、学者、銀行の法務部長が「有識者」として参加されています。
委員の発言でも、それこそ以前も書きました、今回の「改革」が、この国の法的ニーズの受け皿を弁護士以外の、いわゆる「隣接士業」を含めた総体でとらえないで法曹人口の論議がなされてきた点や、急激な増員の影響について、きちっと指摘した委員の意見もあるにはありました。
ところが、弁護士関連となると、こんな見解が飛び出します。
「法曹人口問題は、見方を変えれば、政府と敵対できる法律家はどれぐらいに抑えるべきかという議論でもある」
「法曹人口の増加による質の低下等の問題は、弁護士について言われているのではないか。裁判官、検察官は、成績上位者から採用すればよいので、法曹人口が拡大しても実害がそれほど直接は感じられないと思われる」
「一つの割り切りとして、弁護士の資格は上位3,000 人の方には与えましょう、ただし、全員が弁護士として食っていけるかどうかは別ですよという考え方はなかったのか」
まあ、これが居酒屋での世間話なら目くじらをたてることもないでしょう。あるいは、弁護士の中でも、「有識者といったっていろいろな奴がいるさ」と言ってしまう寛大な方もいるかもしれません。
ただ、そうではありません。歴とした政府の研究会です。さすがに日弁連も、今月25日に出した、この報告書に対する意見書の中で、委員の中のこうした弁護士の役割、法曹三者に必要な能力について「理解されていないと思われる意見」に懸念を表明、「くれぐれもかかる誤った認識を前提と」してくれるな、と忠告しました。
そもそも有識者方式は、あまり評判はよくありません。専門家の方々をお招きして、ご意見を拝聴して、国の政策に反映させようというのだから、誠に殊勝、結構なこと、といった筋書きですが、そうでもありません。
悪評について、おえておさらいすれば、要するに、「有識者」とされた方々は、もともと政府の「応援団」の方々が多く、結果は推して知るべし、「出来レース」ではないか、という指摘です。言い換えれば、「有識者」の肩書を利用した国民懐柔策ではないか、ということです。いわゆる審議会よりも難問が設定され、結局、行政・政治の都合で、議論の中身が最終的に骨抜きになる傾向を指摘する人もいます。人選の基準のあいまいさ、メンバーの偏りといった問題もいわれます。
それでも、多数意見に対して、その問題性を指摘する少数意見が提示される意義をいわれる方もいます。ただ、これはやや虚しい。会議の設置目的が前者のものである以上、「それでは設置の意味がない」と当局者は考えるからです。ましてのちに実施される意見公募の中身が、どれだけ最終的に反映されるかは、要チェックです。
それにしても、今回の研究会に限らず、どうも弁護士に関することとなると、こうした会議の委員からは、ときどき驚く意見が飛び出す傾向があるように思えるのはなぜでしょうか。司法改革をめぐる議論では、たびたび登場しました。
別に弁護士に特別に寛大な意見や甘い見方を提示する必要は、もちろんありません。ただ、極端にねじ曲がった見方は、それこそ日弁連が懸念するように、そのまま何らかの形で政策の方向性に反映する可能性はあります。それを含めて、「出来レース」ならば、さらに大問題であることはいうまでもありません。
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