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    弁護士会法律相談件数減少という兆候

     弁護士会の法律相談件数が減少しているという話が、あちらこちらから聞こえてきます。東京では、東京三弁護士会の相談センターの合計で、2010年には3万件を切って2万9021件、4年前に比べて年間件数が約1万4000件も減っています。地域事情もありますが、各地で減少傾向にあるようです。

     まず、はっきり言われているのは、日本司法支援センター(法テラス)の影響です。相談者がそちらに流れているということです。法テラス東京の相談件数は2006年2万6837件だったのが、2010年には4万397件と、弁護士会とそっくり逆の増え方をしています。全国では、同年25万6719件と、4年前に比べ、約15万件増加しています。

     弁護士会に取って代わる一つの事情は、弁護士会の法律相談が基本的に有料であるのに対し、法テラスでは資格要件を満たせば、無料ということもあります。以前にも書きましたように、これは、大衆が弁護士に求めるサービスの中で、法律相談が最も無償性を期待するものであるという現実が示されているともいえます。

     もう一つの影響としては、個々の法律事務所の活動が活発化していることが言われています。派手な広告・宣伝で顧客を誘因する事務所や、インターネットでの相談の受け付ける事務所の登場で、相談者がそちらにアクセスし始めているということです。ここでも、無料相談をうたい文句にしているところがあります。

     こうした現象に対し、弁護士の受け止め方としては、様々です。弁護士会の法律相談という若手弁護士の事件受任機会が減少してきている点を、法テラスによる脅威とみるとらえ方があります。その点では、前記無償性を意識し、弁護士会がより無料化を模索するという話もないわけではありません。

     ただ、逆の見方もあります。弁護士会の法律相談は、個別の法律事務所でできないことのセーフティネットとして立ち上がったものだというとらえ方です。その意味で、個々の事務所の活動が活発化し、法律相談というニーズの受け皿になってきたのであれば、ある程度、弁護士会の法律相談の歴史的使命は終えたという見方です。

     もっとも、ここでも無償性という問題が絡みます。法テラスや弁護士会が前記したような形で、法律相談の無料化を社会に提示するほどに、個々の事務所としても無料化を図らざるを得なくなるという関係になるとみることもでき、「民業圧迫」といった声まであります。もちろん、これも弁護士増員とともにいわれる、ひとつの競争として、とらえる人もいるかもしれません。無料という利を大衆にもたらすのだ、と。

     しかし、もう一ついわれていることがあります。サラ金関係が一段落したことも含めて、法律相談そのものが頭打ちではないか、ということです。法テラスの法律相談にしても、2009年から伸び率が急激に減少、東京についてはほぼ横ばいです。

     ここから先はどうなるか。弁護士の中で、ささやかれているは、やはり掘り起こしという話です。それは、これまで何度も書いてきたように、大衆には焚きつけと区別がつかない掘り起こしが含まれます。端的に言えば、相談したいけれども相談できない人に向かうのではなく、というよりも、その数が頭打ちのために、相談するつもりがなかった人、必要がないと思っていた人を相談にいかに来させるのか、という話です。大衆が拒否すればいいといったところで、よりそうしたターゲットになるのは大衆です。

     そもそもが弁護士の需要を検証しながら増やしていない、先に増員ありきの結果が、ここでもしわ寄せとなってきます。余裕でこの無料化を士業努力として実践し、競争できる弁護士だけが、存在しているわけではない以上、需要がなければ、作り出してでもという方向になるのも、必然的な話です。

     より無料化した法律相談が受けられる、その選択肢が増える――大衆にとって、少なくとも、そんな期待感だけでは片づけられない状況が進行しているとみるべきです。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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