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    日弁連の情報非公開姿勢

     日弁連・弁護士会の取材をしていて、これまでも情報を頑ななまでに非公開にする執行部や委員会関係者らの姿勢を見ることが度々ありました。もちろんケースによって対応は異なりますが、なぜ、この案件をそこまで隠そうとするのかと、理解に苦しむ場合もなかったわけではありません。委員会の委員に対して、厳重な口止めがなされるケースもありますが、当の委員ですら、その理由をつかみかねていることもあり、また、時に情報が漏れて、報道されてしまった場合に、執行部・委員会関係者らによる「犯人探し」が行われたこともありました。

     実は日弁連には、情報について会員を縛る規則があります。特別委員会規則12条に、こんな規定があります。

      「委員、幹事および連合会の職員は、会長の承認を経なければ委員会の議事の内容に関して外部に発表、その他情報を漏らしてはならない」

     特別委員会とは、日弁連が必要に応じて理事会の議決を経て設置する委員会で(会則82条)、特別に定めた場合以外、委員の任期は2年とされています。しかし、特別委員会に限らず、最終決定あるいは執行(意見書・声明等の提出・送付)以前の案件については、基本的に現在議論がどういう段階にあり、どのようなやりとりがなされているか、また、タタキ台としてどのようなものが挙がっているかなどについては、正規ルートでは明らかにされることはなく、外部の人間はもちろん、会員ですらもつかみ切れていない場合が多々あります。もっとも、あくまで正規ルートの話ですから、そこに情報価値があるということであるならば、こちらもからめ手からいくことになるわけですが。

     こうした日弁連・弁護士会側対応の理由として、いくつかのことが言われています。一つは、誤報の恐れです。議論中の案件が、決定事項のように伝えられ、さらに一人歩きした場合、収拾がつきにくくなる、といったことです。ただ、前記したように、取材する側は当然、それで引き下がらずに、裏ルートも模索することにもなるわけですから、情報の正確性という意味では、むしろきちっと現在の状況を発表した方が、リスクが少ないともいえます。

     もう一つは、対外的な影響です。対外的な交渉を有利に進めるといった戦略的な意図から、発表の時期を調整しようとするものです。特定の事項について設置される前記特別委員会委員に対する規定は、基本的にはそうしたことを想定しているようにとれます。

     実は、もう一つあると考えられます。それは会内の影響です。「改革」をめぐる会内の分裂的世論状況をにらんで、反発が予想されるケースや、会内世論の統一化が困難な案件について、執行部側が非常に神経質な対応をとるケースがみられます。

     最近も、坂野智憲弁護士が「会員間で広く議論すべき内容」としてブロクで日弁連が検討中の新規登録弁護士に対する研修強化案の概要を公表したところ、すぐさまこれが前記特別委員会規則12条違反で、削除要請を受け、訂正するということがありました(「仙台 坂野智憲の弁護士日誌」)。同弁護士は、この件について次のように書いています。

      「私は部外秘とされない限り公表してもよいのだと誤解していましたがそうではないようです。規則を文言通りに読めば日弁連の委員は委員会以外の場所では議事内容について一切口をつぐんでいなければならないことになります。しかし今の日弁連は重要事項についても単位会に意見照会もしない(あるいは十分な時間的余裕を与えない照会しかしない)で理事会だけで決めています。対外的交渉を要する場合などは議事内容を秘密にする必要もあるでしょうが、一切公表まかり成らぬということでよいのでしょうか。以前裁判所からも記事の削除要請を受けたことがあります。僅か1日2日で削除要請が来るということはネット情報を監視しているのでしょう」

     ネットという環境が、この件でも新たな状況を作っていることは事実です。弁護士のブログ、ツイッターによって、より会員のみならず大衆に情報は伝達されやすく、また、事実上、それを縛ること自体が、困難な状況にもなってきているからです。こうした状況であればこそ、より情報漏えいに執行部側が神経をとがらせ、ネット監視もあるべきという方向に向かっているともいえますが、逆にむしろ過剰な規制は無駄とも、いえなくありません。

     しかし、今、最も考えられていいと思うのは、それが内向きの情報統制や意見統一の形をつくるための政策的な意図で行われるのであれば、それは会員と大衆の日弁連に対する不信感につながり、結果として日弁連・弁護士会は弱体化の道をたどる危険があるということです。風通しの悪い日弁連となるデメリットに、もっと目が向けられるべきです。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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