「法科大学院」に縛られた議論が生み出す「悪夢」
法科大学院志願者と司法試験受験者の減少が意味する「法曹離れ」という事態は、本来、今回の法曹養成制度の「改革」にとって、最も深刻な、「悪夢」といってもいい結果です。「改革」推進派は、この最悪の事態を、そもそもどこまで想定していたのか、あるいはできたのかということは、当然、問われていいはずですが、いまや当時を知る人のなかにも本音では「想定できたのにしなかった」ということを感じている人は少なくありません。
それは法曹人口激増と、司法試験・修習という既存の法曹養成プロセスを変えるという既定方針のなかで、これが進められた結果という以外にない現実といえます。つまり、激増の先に弁護士の経済環境が激変することも、「7、8割」とまで銘打った法科大学院修了者の司法試験合格率確保も、新プロセスが未修者を1年差で既習者と同等のレベルにもっていくことや、司法修習の一部を代替する役割を果たすことも、そしてそれらの成果を踏まえて新たな経済的時間的負担になる、その新プロセスへの志望者了解(「価値」への納得が得られることも、ハードルとして認識し、乗り越えることを当然の目標とはしても、果たして冷静に乗り越えられるかどうか検討されたかは疑わしい。要は、「できるのか」と問えば、「やるんです」という答えだけがかえってくるような状況が確かにあったのです。
はじめから可能性を十分に視野に入れ、自信をもって踏み出した結果である、と、今でも胸を張る人もいるでしょう。しかし、動かせない既定方針のなかで、彼らにとって乗り越えられれば素晴らしい目標は逆算するように導き出されても、あるいは既定方針まで疑うことまでも視野にいれた、実現可能性からの逆算は果たして行われたのか、という問題はやはり残るように思うのです。
「法曹離れ対策 法科大学院は再生できるのか」
今回の司法試験の結果を踏まえ、9月19日付け読売新聞がこうしたタイトルの社説を掲載しています。「法曹離れ」という現実に着眼し、その「対策」を論じているものとして、あるいは大マスコミが今回の結果から新たな視点を盛り込むことを期待された読者もいるかもしれません。しかし、読売は、受験者が昨年から1000人以上も減っていることを問題視し、「深刻な『法曹離れ』を食い止める」必要性に言及しながら、徹頭徹尾「法科大学院の立て直し」を中心にすえた枠のなかで、それを捉えようとしています。
挙げられているのは、司法試験合格を見据えた指導強化、飛び級、給付型・無利子の奨学金拡充、法曹への「近道」と捉えられている予備試験の在り方再検討、司法試験問題漏洩を含めた再発防止策。これで「法曹離れ」が解消されると考える人は、果たしてどれだけいるのでしょうか。司法試験の合格率向上、一部の経済的負担軽減、予備試験制限による本道への強制誘導。透けてみえる、これらは、増員政策による弁護士の経済的激変による魅力減退、それに比した新プロセスへの「価値」を見切った志望者たちの判断という、「法曹離れ」の決定的要因から逆算されている、といえるでしょうか。
「優秀な人材の供給源であるはずの法科大学院」という前提に立つ前に、その受験要件化が供給をさまたげていることに着眼すべきであるし、そもそも合格1500人でも増え続ける弁護士の現実を考えれば、弁護士の経済的環境の改善という大きな要因に言及しないことも本来に不自然なはずです。彼らのなかで不自然でないのは、取りも直さず法科大学院制度の本丸をぐらつかせる話をしないという枠のなかで語り、伝えようとしているからにほかなりません。
司法試験合格発表後、札幌、埼玉、三重、千葉県の各弁護士会が、改めて年間司法試験を早急に1000人以下、もしくは程度(埼玉弁700人程度を前提に抗議)にするよう求める会長声明・談話を発表しています。増員基調がもたらしている現実をなんとかしなければ、「法曹離れ」は改善されず、さらにそのしわ寄せは社会に回ってくるという強い危機感をはらんだこれらの声に、大マスコミの扱いは冷ややかです。さらにいえば、いまだ1500人という枠で考えている日弁連や沈黙する弁護士会もまた、この読売社説同様に、「改革」路線の枠を越えて、この事態の決定的要因から逆算しているのかを疑いたくなります。
「改革」の既定方針に縛られ、それを疑うことなく、「法曹離れ」改善への実現可能性や効果から逆算しないという、この「改革」の誤りの繰り返しの先に続くのは、やはり「悪夢」でしかないと思えてなりません。
「依頼者保護給付金制度」についてご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/7275
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それは法曹人口激増と、司法試験・修習という既存の法曹養成プロセスを変えるという既定方針のなかで、これが進められた結果という以外にない現実といえます。つまり、激増の先に弁護士の経済環境が激変することも、「7、8割」とまで銘打った法科大学院修了者の司法試験合格率確保も、新プロセスが未修者を1年差で既習者と同等のレベルにもっていくことや、司法修習の一部を代替する役割を果たすことも、そしてそれらの成果を踏まえて新たな経済的時間的負担になる、その新プロセスへの志望者了解(「価値」への納得が得られることも、ハードルとして認識し、乗り越えることを当然の目標とはしても、果たして冷静に乗り越えられるかどうか検討されたかは疑わしい。要は、「できるのか」と問えば、「やるんです」という答えだけがかえってくるような状況が確かにあったのです。
はじめから可能性を十分に視野に入れ、自信をもって踏み出した結果である、と、今でも胸を張る人もいるでしょう。しかし、動かせない既定方針のなかで、彼らにとって乗り越えられれば素晴らしい目標は逆算するように導き出されても、あるいは既定方針まで疑うことまでも視野にいれた、実現可能性からの逆算は果たして行われたのか、という問題はやはり残るように思うのです。
「法曹離れ対策 法科大学院は再生できるのか」
今回の司法試験の結果を踏まえ、9月19日付け読売新聞がこうしたタイトルの社説を掲載しています。「法曹離れ」という現実に着眼し、その「対策」を論じているものとして、あるいは大マスコミが今回の結果から新たな視点を盛り込むことを期待された読者もいるかもしれません。しかし、読売は、受験者が昨年から1000人以上も減っていることを問題視し、「深刻な『法曹離れ』を食い止める」必要性に言及しながら、徹頭徹尾「法科大学院の立て直し」を中心にすえた枠のなかで、それを捉えようとしています。
挙げられているのは、司法試験合格を見据えた指導強化、飛び級、給付型・無利子の奨学金拡充、法曹への「近道」と捉えられている予備試験の在り方再検討、司法試験問題漏洩を含めた再発防止策。これで「法曹離れ」が解消されると考える人は、果たしてどれだけいるのでしょうか。司法試験の合格率向上、一部の経済的負担軽減、予備試験制限による本道への強制誘導。透けてみえる、これらは、増員政策による弁護士の経済的激変による魅力減退、それに比した新プロセスへの「価値」を見切った志望者たちの判断という、「法曹離れ」の決定的要因から逆算されている、といえるでしょうか。
「優秀な人材の供給源であるはずの法科大学院」という前提に立つ前に、その受験要件化が供給をさまたげていることに着眼すべきであるし、そもそも合格1500人でも増え続ける弁護士の現実を考えれば、弁護士の経済的環境の改善という大きな要因に言及しないことも本来に不自然なはずです。彼らのなかで不自然でないのは、取りも直さず法科大学院制度の本丸をぐらつかせる話をしないという枠のなかで語り、伝えようとしているからにほかなりません。
司法試験合格発表後、札幌、埼玉、三重、千葉県の各弁護士会が、改めて年間司法試験を早急に1000人以下、もしくは程度(埼玉弁700人程度を前提に抗議)にするよう求める会長声明・談話を発表しています。増員基調がもたらしている現実をなんとかしなければ、「法曹離れ」は改善されず、さらにそのしわ寄せは社会に回ってくるという強い危機感をはらんだこれらの声に、大マスコミの扱いは冷ややかです。さらにいえば、いまだ1500人という枠で考えている日弁連や沈黙する弁護士会もまた、この読売社説同様に、「改革」路線の枠を越えて、この事態の決定的要因から逆算しているのかを疑いたくなります。
「改革」の既定方針に縛られ、それを疑うことなく、「法曹離れ」改善への実現可能性や効果から逆算しないという、この「改革」の誤りの繰り返しの先に続くのは、やはり「悪夢」でしかないと思えてなりません。
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