日弁連、新「行動計画」の欠落感
日弁連が、2月17日付けで、新たな「司法サービスの全国展開と充実のための行動計画」を発表しました。今後10年を見据えたもので、前回2012年以来、まとめられたものです。内容としては、「法律事務所の設置等」「法律相談サービス提供態勢の整備・確立」「法律相談サービス等の充実」「刑事国選弁護事件及び少年付添事件の対応態勢の整備」「犯罪被害者対応態勢の整備」について、それぞれいくつかの計画が示されています。
例えば、「法律事務所の設置等」では、以下のようなことが列挙されています。
① 全ての地方裁判所支部管内において、弁護士ゼロワン状態を解消する。
② 人口3万人以上の簡易裁判所管内及び人口3万人以上の市町村において、弁護士過疎度が高く、弁護士の需要が高いと考えられる地点から、順次、弁護士の過疎・偏在状態の解消を目指す。
③ 人口にかかわらず、弁護士に対するアクセスの不便性や地域の要望などを総合的に考慮して、法律事務所の設置の必要性が高いと判断される地域にも、法律事務所を設置する。
④ 地方裁判所支部管内において、女性弁護士がゼロである地域をできる限り減らし、最終的には解消するための制度設計を行い、地方裁判所支部管内における女性弁護士ゼロ地域の解消に取り組む。
タイトル通り、日弁連は「司法サービスの全国展開と充実」に向けた、きっちりとした目標は示しています。ただ、この「行動計画」には、会内から冷ややかな声も聞こえてきます。「目標」ではあっても、果たして「計画」といえるのか――。要は、具体化する手段、あるいは裏付けが、はっきりと会員弁護士に伝わる形で示されているとはいえないからです。
日弁連は、この「行動計画」の「策定の経緯」という一文の中で、以下のような認識を示しています。
「この約四半世紀にわたる弁護士過疎・偏在解消に向けた当連合会の行動によって、全国各地で弁護士を通じての司法アクセスは相当程度改善されたと言えるが、人口の高齢化などにより市民が弁護士にアクセスすることが困難な地域が存在しないと言える状況にはないこと、弁護士の絶対数が4万人以上に増えたものの、現在も登録している弁護士の約3分の2が東京や大阪、名古屋の大都市に集中していること、他方、地方や支部で登録する弁護士の数は減少し、地域住民に対する司法サービスは、質・量ともに十分とは考えられないことからすれば、いまだ弁護士過疎や弁護士の偏在状態が十分に解消されたとは言えず、今後とも当連合会が率先して市民の司法アクセスの充実に向けた行動を展開していく必要性はなお高いと言うべきである」
全国各地で弁護士を通じて司法アクセスが相当程度改善され、弁護士の絶対数が4万人以上に増えた現在も登録している弁護士の約3分の2が東京や大阪、名古屋の大都市に集中し、地方や支部で登録する弁護士の数は減少している――。ここまでの認識を示しながら、日弁連はこの原因を直視しているといえるでしょうか。
偏在の現実は、あくまで弁護士の生存のための経済的条件の反映であり、その必然的な結果であること。従って、もし、あくまで「ゼロワン」解消的な発想で、弁護士の地域定着化を目指すのであれば、その経済的条件の担保が前提的に語られる必要がある――。前記のような認識を示すのであれば、このことこそが、実は日弁連が「約四半世紀にわたる」といっている活動の、最も教訓として語られていいことではないのでしょうか。
前記紋切り型にもとれる「法律事務所の設置等」に関する4点どれをとっても、まずそのことがひっかかってしまうのです。経済的な裏付けをどこに求めるという前提なのでしょうか。公的支援でしょうか。それとも弁護士の有志の精神に期待し続けるということ(その限界は認識していないということ)でしょうか(「弁護士過疎と増員の本当の関係」 「本当のことをいうべき日弁連」)。
はたまたさらに増員政策を推し進めれば、依然トリクルダウンのように、都市部から溢れた出す弁護士が、地方に流れ、「質・量ともに十分とは考えられない」地域の司法サービスを充足させてくれるはず、というヨミなのでしょうか。「女性弁護士ゼロ地域の解消」の必要性を強調しても、その意義だけでどうにかなるわけではないのです(「地方ニーズ論と減員不要論への疑問」)。
会員の中から今、冷ややかな声が聞かれるのは、こうした発想を抜きに突っ込んだ、かつての発想への反省、そこから得た教訓が、この新たな「行動計画」に反映しているようにみえないからのように思えてならないのです。
地方の弁護士ニーズについて、ご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/4798
司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信中!無料読者登録よろしくお願いします。https://www.mag2.com/m/0001296634.html

にほんブログ村

にほんブログ村


例えば、「法律事務所の設置等」では、以下のようなことが列挙されています。
① 全ての地方裁判所支部管内において、弁護士ゼロワン状態を解消する。
② 人口3万人以上の簡易裁判所管内及び人口3万人以上の市町村において、弁護士過疎度が高く、弁護士の需要が高いと考えられる地点から、順次、弁護士の過疎・偏在状態の解消を目指す。
③ 人口にかかわらず、弁護士に対するアクセスの不便性や地域の要望などを総合的に考慮して、法律事務所の設置の必要性が高いと判断される地域にも、法律事務所を設置する。
④ 地方裁判所支部管内において、女性弁護士がゼロである地域をできる限り減らし、最終的には解消するための制度設計を行い、地方裁判所支部管内における女性弁護士ゼロ地域の解消に取り組む。
タイトル通り、日弁連は「司法サービスの全国展開と充実」に向けた、きっちりとした目標は示しています。ただ、この「行動計画」には、会内から冷ややかな声も聞こえてきます。「目標」ではあっても、果たして「計画」といえるのか――。要は、具体化する手段、あるいは裏付けが、はっきりと会員弁護士に伝わる形で示されているとはいえないからです。
日弁連は、この「行動計画」の「策定の経緯」という一文の中で、以下のような認識を示しています。
「この約四半世紀にわたる弁護士過疎・偏在解消に向けた当連合会の行動によって、全国各地で弁護士を通じての司法アクセスは相当程度改善されたと言えるが、人口の高齢化などにより市民が弁護士にアクセスすることが困難な地域が存在しないと言える状況にはないこと、弁護士の絶対数が4万人以上に増えたものの、現在も登録している弁護士の約3分の2が東京や大阪、名古屋の大都市に集中していること、他方、地方や支部で登録する弁護士の数は減少し、地域住民に対する司法サービスは、質・量ともに十分とは考えられないことからすれば、いまだ弁護士過疎や弁護士の偏在状態が十分に解消されたとは言えず、今後とも当連合会が率先して市民の司法アクセスの充実に向けた行動を展開していく必要性はなお高いと言うべきである」
全国各地で弁護士を通じて司法アクセスが相当程度改善され、弁護士の絶対数が4万人以上に増えた現在も登録している弁護士の約3分の2が東京や大阪、名古屋の大都市に集中し、地方や支部で登録する弁護士の数は減少している――。ここまでの認識を示しながら、日弁連はこの原因を直視しているといえるでしょうか。
偏在の現実は、あくまで弁護士の生存のための経済的条件の反映であり、その必然的な結果であること。従って、もし、あくまで「ゼロワン」解消的な発想で、弁護士の地域定着化を目指すのであれば、その経済的条件の担保が前提的に語られる必要がある――。前記のような認識を示すのであれば、このことこそが、実は日弁連が「約四半世紀にわたる」といっている活動の、最も教訓として語られていいことではないのでしょうか。
前記紋切り型にもとれる「法律事務所の設置等」に関する4点どれをとっても、まずそのことがひっかかってしまうのです。経済的な裏付けをどこに求めるという前提なのでしょうか。公的支援でしょうか。それとも弁護士の有志の精神に期待し続けるということ(その限界は認識していないということ)でしょうか(「弁護士過疎と増員の本当の関係」 「本当のことをいうべき日弁連」)。
はたまたさらに増員政策を推し進めれば、依然トリクルダウンのように、都市部から溢れた出す弁護士が、地方に流れ、「質・量ともに十分とは考えられない」地域の司法サービスを充足させてくれるはず、というヨミなのでしょうか。「女性弁護士ゼロ地域の解消」の必要性を強調しても、その意義だけでどうにかなるわけではないのです(「地方ニーズ論と減員不要論への疑問」)。
会員の中から今、冷ややかな声が聞かれるのは、こうした発想を抜きに突っ込んだ、かつての発想への反省、そこから得た教訓が、この新たな「行動計画」に反映しているようにみえないからのように思えてならないのです。
地方の弁護士ニーズについて、ご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/4798
司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信中!無料読者登録よろしくお願いします。https://www.mag2.com/m/0001296634.html

にほんブログ村

にほんブログ村


スポンサーサイト