本来語られるべき「メリット」
法科大学院に行くメリットとして、第一に「司法試験の受験資格が得られる」ということが、志望者向けのサイトなどで掲げられています。業界外の人の話を聞いてみても、どうももはや当たり前に、それが最大のメリットとして、社会が受け止め出している印象すらあります。
「法科大学院に進学するメリットの第一にあげられるのは、修了もしくは修了見込みとなれば司法試験の受験資格が確実に得られることです。(中略)予備試験の合格率は約4%になっており、非常な狭き門だといえます。それに対して、法科大学院なら、大学を選ばなければ比較的容易に入学することができます」(MSAgent)
ある士業転職サービスのサイトでは、こんな風に書かれていました。内容が間違っているとはいえません。しかし、「確実」ということを強調していますが、あくまで司法試験の受験資格取得についてであり、後段に至っては、「大学を選ばなければ比較的容易」というのも、あくまで法科大学院の入学についてですから、修了・修了見込み受験資格が得られるところに、比較的簡単に入れる点が、法科大学院に行く一番のメリットだ、と言っていることになります。
ちなみに、このサイトでは、これに続くメリットとして、「社会人でも通える」「教員と学生の距離が近い」という点を挙げています。「夜間」があるといっても、どこまで社会人が利用しやすい現実があるのかという疑問、さらにソクラテスメソッドの効果や人脈作りへの可能性につなげたい文脈にもとれますが、現実的には評価は分かれると思います。いずれもメリットとして、正直どこまで強調していい材料なのか、と言いたくなります。
こうしたメリットの扱いは、志望者に対するミスリードになるのではないか、という声が、業界内にはずっとあります。ただ、それもさることながら、改めてむしろ、法科大学院関係者の方に、本当にこれでよしとするのか、ということを問いたくなってしまうのです。
以前も書いたことがありますが、「受験資格が取得できる」ということについては、あくまでそういう制度にした、あるいは現状そうなっている、ことによるだけに過ぎません。予備試験を通過するよりも、「大学を選ばなければ比較的容易」に入れる機関で「確実」に受験資格を取得できるメリットとは、合格を視野に入れようとしている志望者にとっては、果たしてメリットといえるのかも疑わしいように思えます(「法科大学院の『メリット』というテーマ」)。
いうまでもなく、本来は、法科大学院に受験資格付与を独占させているメリットが語られなくてはならず、さらにいえば、法科大学院関係者こそ、そう受けとめるべきではないか、と思えることが、まさに彼らへの問いかけにつながっているのです。
つまり、本来は、司法試験合格やその先の法曹として在り方に、法科大学院で学ぶことがこれだけプラスになるということこそが、メリットとして語られるべきなのに、それがない。「受験資格取得」とは、その中身がない、外の皮だけの、スカスカのメリット。それがまず第一に掲げられている現実です。
もっとも前記本来語られるべきメリットは、もはや法科大学院関係者の主張よりも、教育を体験した志望者と、その輩出法曹への社会の評価によるというべきかもしれません。つまり、法科大学院はおカネと時間をかけても行くだけの価値がある、のちのちこのプロセスを経てなければ差がついてしまう、違いが表れるという評価こそが、メリットでなければならないはずなのです。
前記サイトの記事を見ても、そういうものではないメリットが、さらっと語られている。それ自体、法科大学院の社会的評価の現実と言うべきかもしれませんが、肝心の法科大学院関係者自体、本当に前記のような違い示すことで、勝負する気はもはやあるといえるのでしょうか。
本来、それで勝負するのであれば、受験要件付与という特権にしがみつかず、それを手放しても、選ばれる機関となる自信があっていいように思えます。制度創設当初の、実績を示しようがない時点ならばともかく、今の段階で「これ手放したらば選ばれなくなる」という弁明は有効と見るべきなのでしょうか(「法科大学院制度の『勝利条件』」)。
志望者へのミスリードという声について書きましたが、むしろ強調材料にできないような法科大学院へ行くメリットの列挙に、彼らは制度の現実を見抜く、あるいは見抜いていると考えれば、それはもはや懸念材料とはいえないかもしれません。
むしろ懸念しなければいけないのは、強調できないメリットの上で、本来語るべきメリットを実績としてアピールできない機関を、「中核」に位置付け続けている法曹養成の現実というべきです。
「予備試験」のあり方をめぐる議論についてご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/5852
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「法科大学院に進学するメリットの第一にあげられるのは、修了もしくは修了見込みとなれば司法試験の受験資格が確実に得られることです。(中略)予備試験の合格率は約4%になっており、非常な狭き門だといえます。それに対して、法科大学院なら、大学を選ばなければ比較的容易に入学することができます」(MSAgent)
ある士業転職サービスのサイトでは、こんな風に書かれていました。内容が間違っているとはいえません。しかし、「確実」ということを強調していますが、あくまで司法試験の受験資格取得についてであり、後段に至っては、「大学を選ばなければ比較的容易」というのも、あくまで法科大学院の入学についてですから、修了・修了見込み受験資格が得られるところに、比較的簡単に入れる点が、法科大学院に行く一番のメリットだ、と言っていることになります。
ちなみに、このサイトでは、これに続くメリットとして、「社会人でも通える」「教員と学生の距離が近い」という点を挙げています。「夜間」があるといっても、どこまで社会人が利用しやすい現実があるのかという疑問、さらにソクラテスメソッドの効果や人脈作りへの可能性につなげたい文脈にもとれますが、現実的には評価は分かれると思います。いずれもメリットとして、正直どこまで強調していい材料なのか、と言いたくなります。
こうしたメリットの扱いは、志望者に対するミスリードになるのではないか、という声が、業界内にはずっとあります。ただ、それもさることながら、改めてむしろ、法科大学院関係者の方に、本当にこれでよしとするのか、ということを問いたくなってしまうのです。
以前も書いたことがありますが、「受験資格が取得できる」ということについては、あくまでそういう制度にした、あるいは現状そうなっている、ことによるだけに過ぎません。予備試験を通過するよりも、「大学を選ばなければ比較的容易」に入れる機関で「確実」に受験資格を取得できるメリットとは、合格を視野に入れようとしている志望者にとっては、果たしてメリットといえるのかも疑わしいように思えます(「法科大学院の『メリット』というテーマ」)。
いうまでもなく、本来は、法科大学院に受験資格付与を独占させているメリットが語られなくてはならず、さらにいえば、法科大学院関係者こそ、そう受けとめるべきではないか、と思えることが、まさに彼らへの問いかけにつながっているのです。
つまり、本来は、司法試験合格やその先の法曹として在り方に、法科大学院で学ぶことがこれだけプラスになるということこそが、メリットとして語られるべきなのに、それがない。「受験資格取得」とは、その中身がない、外の皮だけの、スカスカのメリット。それがまず第一に掲げられている現実です。
もっとも前記本来語られるべきメリットは、もはや法科大学院関係者の主張よりも、教育を体験した志望者と、その輩出法曹への社会の評価によるというべきかもしれません。つまり、法科大学院はおカネと時間をかけても行くだけの価値がある、のちのちこのプロセスを経てなければ差がついてしまう、違いが表れるという評価こそが、メリットでなければならないはずなのです。
前記サイトの記事を見ても、そういうものではないメリットが、さらっと語られている。それ自体、法科大学院の社会的評価の現実と言うべきかもしれませんが、肝心の法科大学院関係者自体、本当に前記のような違い示すことで、勝負する気はもはやあるといえるのでしょうか。
本来、それで勝負するのであれば、受験要件付与という特権にしがみつかず、それを手放しても、選ばれる機関となる自信があっていいように思えます。制度創設当初の、実績を示しようがない時点ならばともかく、今の段階で「これ手放したらば選ばれなくなる」という弁明は有効と見るべきなのでしょうか(「法科大学院制度の『勝利条件』」)。
志望者へのミスリードという声について書きましたが、むしろ強調材料にできないような法科大学院へ行くメリットの列挙に、彼らは制度の現実を見抜く、あるいは見抜いていると考えれば、それはもはや懸念材料とはいえないかもしれません。
むしろ懸念しなければいけないのは、強調できないメリットの上で、本来語るべきメリットを実績としてアピールできない機関を、「中核」に位置付け続けている法曹養成の現実というべきです。
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