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    法科大学院に繋ぎ止める「価値」

     法科大学院の在格中受験資格で司法試験に合格しながら留年、という現実に直面する学生が話題になり始めています。一般にはあまり知られていないようですが、制度上、在学中に受験資格で合格しても法科大学院の課程を修了できなかったり、また退学したりしても、司法修習の採用要件は満たさないことになっています(裁判所法66条1項 法務省「在学中受験資格に関するQ&A」)。

     つまり、在学中資格での受験である以上、本来合格によって先に進めるはずの関門であっても、あくまで合格者は、現実的には法科大学院につなぎとめられることを余儀なくされる、ということです。もっとも制度側に立てば、司法試験合格をもって、修了条件に合致したものであるとはならず、法科大学院での基準で対応するしかないのだから、前記の現実は、今のところ致し方ない、ということになります。

     しかし、繰り返しますが、これは現行制度を前提にした場合の話です。問題は、このケースで感じる不合理性を、現行制度は、その「価値」で現実的に払拭し切れているのか、という点にあります。

     有り体に言ってしまえば、最終関門をパスしながら、法科大学院の教育課程に繋ぎ止める不利益を上回る「価値」をその教育課程が提供していることを、志望者や社会の評価として実証されているか。さらにいえば、制度側が、そこに果たしてこだわっているのか、ということへの疑問です。

     これは、これまでも書いてきた法科大学院修了を司法試験の受験資格要件にしている制度、それに法科大学院というプロセスがあくまでしがみついている現実への疑問と、同じことがいえてしまうのです。

     つまり、前記要件によって法科大学院プロセスを必須化することにしても、在学中合格者を、法科大学院の教育課程につなぎとめるにしても、その「価値」が実証されるということは、当然、そうでない場合に比べ、例えば、法曹の能力や知識、意識などにあって、有意な差がある、ということであっていいのではないか、ということなのです。

     いまだに制度が道半ばで、その理想的な教育の効果は、これから現れるととれることを言う方もいますが、一方で本当にそういう志望者や社会の評価で勝負しようとしているのか、という疑問もあります。失敗が言われている法科大学院制度ですが、法科大学院をなくすということではなく、前記受験要件を外したうえで、それでも「価値」を認める志望者が利用する形にすればいいではないか、という声は今もあります。

     しかし、肝心の制度を担う人の側には、つとにそれで制度が勝負すること、そして、その社会的な実績と評価によって、制度が支えられる形になることへの自信がないのです。むしろ、受験要件を手放せば、学生に制度はより選択されず、事実上、制度は終わる、と(「『受験要件化』の正当性という視点」)。

     法科大学院の在学中受験容認が新法曹養成制度の見直し案として提案されたとき、その狙いは志望者が流れている予備試験ルートとの「競争条件の改善」にあるという見方が、法科大学院制度擁護派の中からも聞かれました。要するに、志望者を取りもどすための、合格までの時短化です(「法曹志望者回復をめぐる発想と誤解」)。

     しかし、冒頭のような現実に加え、予備試験合格後でも法科大学院在学中資格で司法試験を受験しないと、免除だった学費と給付金の返還が求められてしまうなど、実質的に受験資格の選択が強要されているといった声や、一部教員の恣意的な評価への不安視もあり、予備試験ルートの方が、透明性が高く安全という見方も出ています(Schulze BLOG)。

     制度存続を無条件に前提とするのではなく、そこにどのような価値があり、そして何より、それをきちっと実証できているのかを前提に、制度の「価値」を見直す議論に、もえそろそろ切り換えるべきときではないかと思えてなりません。


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    テーマ : 資格試験
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    松下幸之助はたびたび従業員に「それ儲かりまっか?」と尋ねたという。

    ある時、経営幹部が松下幸之助に新製品の提案をした。彼は、様々な理論を用いて新製品の素晴らしさをプレゼンテーションしていく。長時間にわたるプレゼンテーションを聞き終えた松下幸之助は、「それ、儲かりまっか?」と一言尋ねた。経営幹部は言葉に詰まり返事することができなかった。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
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