弁護士とボランティアの厄介な関係
弁護士の仕事と、いわゆるボランティア活動は、ある意味、微妙な関係にあります。何が微妙かといえば、要するに見方よっては、大衆からみて、本来の弁護士の仕事のある部分が、ボランティア活動のようにも見えてしまう、ということです。つまり、境目が分かりにくい。
その結果どういうことになるかというと、有償の弁護士のお仕事についても、「ボランティアでもいいんじゃないの」という意識が生まれやすいということだろうと思います。
代表的なものとしては、法律相談があると思います。法律相談は、おそらく大衆が、最も無償性を期待する弁護士の仕事です。以前にも書きましたが、多くの市民の感覚では、相談は本来的にはビジネス同様、正式契約前の無料の領域にあってもいい、という受け止め方があります(「『法律相談』というニーズ」)。要するに見積もりの段階で料金をとられる感覚があるのです。また、自治体などがやる無料法律相談のイメージがあり、相談まではボランティアでいいとするような感覚があるのかもしれません。
もちろん弁護士からすれば、相談自体が解決につながる場合もある法的指南ですので、当然に有料課金対象の仕事です。ただ、前記したような市民の意識も踏まえて、初回について無料にするなどの柔軟な姿勢を示しつつあり、弁護士側もこうした一般の感覚も理解していないわけではないと思います。
弁護士会が行う法律相談について、以前、東京の弁護士会で、これをボランティアと見るか会員の権利と見るかで議論になったことがありました(前出「『法律相談』というニーズ」)。相談担当を外された会員が、抗議したことに端を発したもので、担当を外すことは「ビジネスチャンス」を与えられる権利を奪うものではないか、という話になったのです。
ある意味、国民目線の話ではありませんが、法律相談の位置付けが、弁護士にとっても微妙な存在であることを示すものではあります。
ボランティアということでは、東京の三弁護士会と大阪弁護士会が、会員への公益活動を義務づけています。会によって若干内容が違い、義務的公益活動、一般的公益活動といった区分をして、いわゆるプロボノ活動との代替を可能にしているところもあれば、会務を中心にとらえているところもあり、やはりここでも公益活動と弁護士会会務の位置取りについては、若干の揺らぎがある印象を受けます。
ただ、これらの規定で最も問題になったのは、義務化の点です。いずれの会も、しなかった会員に負担金(東京、第一東京、大阪が年5万円、第二東京が10時間に満たなかった不足分1時間5千円)を課しているのが、ペナルティととれるからです。
ボランティア活動の基本的理念は、自発(自由意思)性、無償(無給)性、公共(公益)性、先駆(開発、発展)性にあるとする考え方があります(文部省生涯学習局長通知)。これからすると、前記自発性を問わないことになる義務化は、少なくともその意味でボランティアとはいえないことになります。
もちろん、強制しなくてはやらなくなる、という趣旨ととれますし、弁護士の意識レベルはそれから逆算されても致し方ありません。ちなみに4弁護士会とも、会員のうち何人が、負担金を払って済ませているかは公表していません。
さて、最近の弁護士のブログで、弁護士は法科大学院へのボランティアをやめたらばどうだ、という意見が出ていました。(「福岡の家電弁護士 なにわ電気商会」)。
「弁護士は、法科大学院に、選任の学者教授よりはるかに忙しく、またリスクの高い仕事をしているのに、比べものにならないくらい安いギャラで、ボランティアとして法科大学院に協力しています。弁護士が、未来の法曹のためと思って、不満がありながらも、法科大学院にこれだけ奉仕しているのに、法科大学院は、未来の法曹のための給費制維持に対して『やめろ』などとぬかす。こんな法科大学院に、弁護士が何の協力を必要とするのか」
法科大学院側の給費制維持に協力できないとする姿勢に対する怒りです。そんなことをいうのであれば、職業意識から来るボランティアは喜んでするが、法科大学院を潤す、あるいは学者がちゃんと教えきれない尻拭いを「ボランティア」としてやらせようとすることに、助力する義理はない、というわけです。
職業意識としてのボランティアという意識で貢献するには、今の法科大学院がだれのためにあるのか分からなくなっている、ということでもあります。ボランティアというのであれば、もはや前記「公共性」がぐらついているということになるかもしれません。
それにしても、弁護士がボランティアで法科大学院に協力しているといった事実は、一般には知られていないことです。ボランティアでやらなくてもいいはずのことはボランティア扱いすべきとされ、ボランティアで自発的にやっていることは、ボランティアとは認められていない。弁護士というのは、よくよくそういう仕事なのかもしません。
ただいま、「今、必要とされる弁護士」についてもご意見募集中!
投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
http://www.shihouwatch.com/
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その結果どういうことになるかというと、有償の弁護士のお仕事についても、「ボランティアでもいいんじゃないの」という意識が生まれやすいということだろうと思います。
代表的なものとしては、法律相談があると思います。法律相談は、おそらく大衆が、最も無償性を期待する弁護士の仕事です。以前にも書きましたが、多くの市民の感覚では、相談は本来的にはビジネス同様、正式契約前の無料の領域にあってもいい、という受け止め方があります(「『法律相談』というニーズ」)。要するに見積もりの段階で料金をとられる感覚があるのです。また、自治体などがやる無料法律相談のイメージがあり、相談まではボランティアでいいとするような感覚があるのかもしれません。
もちろん弁護士からすれば、相談自体が解決につながる場合もある法的指南ですので、当然に有料課金対象の仕事です。ただ、前記したような市民の意識も踏まえて、初回について無料にするなどの柔軟な姿勢を示しつつあり、弁護士側もこうした一般の感覚も理解していないわけではないと思います。
弁護士会が行う法律相談について、以前、東京の弁護士会で、これをボランティアと見るか会員の権利と見るかで議論になったことがありました(前出「『法律相談』というニーズ」)。相談担当を外された会員が、抗議したことに端を発したもので、担当を外すことは「ビジネスチャンス」を与えられる権利を奪うものではないか、という話になったのです。
ある意味、国民目線の話ではありませんが、法律相談の位置付けが、弁護士にとっても微妙な存在であることを示すものではあります。
ボランティアということでは、東京の三弁護士会と大阪弁護士会が、会員への公益活動を義務づけています。会によって若干内容が違い、義務的公益活動、一般的公益活動といった区分をして、いわゆるプロボノ活動との代替を可能にしているところもあれば、会務を中心にとらえているところもあり、やはりここでも公益活動と弁護士会会務の位置取りについては、若干の揺らぎがある印象を受けます。
ただ、これらの規定で最も問題になったのは、義務化の点です。いずれの会も、しなかった会員に負担金(東京、第一東京、大阪が年5万円、第二東京が10時間に満たなかった不足分1時間5千円)を課しているのが、ペナルティととれるからです。
ボランティア活動の基本的理念は、自発(自由意思)性、無償(無給)性、公共(公益)性、先駆(開発、発展)性にあるとする考え方があります(文部省生涯学習局長通知)。これからすると、前記自発性を問わないことになる義務化は、少なくともその意味でボランティアとはいえないことになります。
もちろん、強制しなくてはやらなくなる、という趣旨ととれますし、弁護士の意識レベルはそれから逆算されても致し方ありません。ちなみに4弁護士会とも、会員のうち何人が、負担金を払って済ませているかは公表していません。
さて、最近の弁護士のブログで、弁護士は法科大学院へのボランティアをやめたらばどうだ、という意見が出ていました。(「福岡の家電弁護士 なにわ電気商会」)。
「弁護士は、法科大学院に、選任の学者教授よりはるかに忙しく、またリスクの高い仕事をしているのに、比べものにならないくらい安いギャラで、ボランティアとして法科大学院に協力しています。弁護士が、未来の法曹のためと思って、不満がありながらも、法科大学院にこれだけ奉仕しているのに、法科大学院は、未来の法曹のための給費制維持に対して『やめろ』などとぬかす。こんな法科大学院に、弁護士が何の協力を必要とするのか」
法科大学院側の給費制維持に協力できないとする姿勢に対する怒りです。そんなことをいうのであれば、職業意識から来るボランティアは喜んでするが、法科大学院を潤す、あるいは学者がちゃんと教えきれない尻拭いを「ボランティア」としてやらせようとすることに、助力する義理はない、というわけです。
職業意識としてのボランティアという意識で貢献するには、今の法科大学院がだれのためにあるのか分からなくなっている、ということでもあります。ボランティアというのであれば、もはや前記「公共性」がぐらついているということになるかもしれません。
それにしても、弁護士がボランティアで法科大学院に協力しているといった事実は、一般には知られていないことです。ボランティアでやらなくてもいいはずのことはボランティア扱いすべきとされ、ボランティアで自発的にやっていることは、ボランティアとは認められていない。弁護士というのは、よくよくそういう仕事なのかもしません。
ただいま、「今、必要とされる弁護士」についてもご意見募集中!
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