「弁護士会系」法科大学院挫折の意味
桐蔭横浜大学(横浜市)と大宮法科大学院大学(さいたま市)の統合が、弁護士の間で話題になっています。大宮は募集を停止、2016年3月をめどに、事実上桐蔭横浜が「吸収合併」するということのようです。
伝えられる現実は、▽志願者が2004年度桐蔭横浜1022人、大宮1605人だったのが、11年度はそれぞれ81人、96人に減少▽同年度の入学者は桐蔭横浜38人(定員60人)、大宮27人(同70人)▽2010年の新司法試験合格率は桐蔭横浜が7.2%(6人)、大宮は10.1%(12人)で全国平均(25.4%)以下▽大宮は設立以来、毎年1億~3億円程度の赤字。桐蔭横浜も赤字が続いている状況――など。
法科大学院の統合は初めてですが、合格率の格差が生まれ、経営状態が悪化している現状からすれば、他人事ではない法科大学院はほかにもいくらもあるわけで、こうした統合・再編が進むという見通しも話題のタネにはなっています。
しかし、こうした現実もさることながら、今回の統合に弁護士が特別な見方をするのは、いうまでもなく、大宮法科大学院大は第二東京弁護士会が全面的にバックアップした、弁護士会肝いりの法科大学院だったからです。他にもみられるような、協力関係ではなく、いわば「弁護士会が弁護士を養成する」というコンセプトを明確にしていた法科大学院だったのです。
「第二東京弁護士会は、法曹一元の理想を掲げ、主導的に日本のロースクール構想をリードしてきた弁護士会です」
大宮法科大学院大学の「設置の趣旨」はこんな言葉から始まります。「新しい教育機関を創設し、現代の複雑化した問題を法的に解決できる能力を持った優秀な弁護士を育てること」がロースクールのあるべき姿であり、その姿を現実とするために、「このロースクール構想をリードしてきた」第二東京弁護士会が創設に大きくかかわった、のだと、誇らしげに書かれています。前記のコンセプトへの関係者の期待感がにじみ出ている感じがします。
設立当初、弁護士会のなかには、冷めた見方をする他の弁護士会会員もいて、必ずしも全会挙げてこのチャレンジに期待していたかは疑問ではありますが、ただ、少なくとも弁護士会関与の実験的な試みとして、注目していた会員は少なくなかったと思います。
さて、このチャレンジの「失敗」が意味するところは、ある意味、はっきりしています。つまり、現在の法科大学院制度が、「多様な人材確保」という目指す形になっていないということです。
桐蔭横浜、大宮両校とも、いずれも夜間授業を開講するなど、法学部以外の出身者や社会人経験のある人の法曹育成に力を入れていたとの評価がなされています。その2校の行き詰まりは、この制度がいかにそうした理念を成り立たせない現実を引きずっているかを示しています。
大宮は学部を持たずに、法科大学院単体で運営されていることや、桐蔭横浜は学部を持ちますが、まだ新しく、実績面で弱みも指摘されていたといった、個別の事情はありました。
しかし、やはり問題は合格率の話に行きついてしまいます。志望者は、合格率が確保されていれば行く、という。合格率を意識しても、受験対策では予備校化するといわれ、さりとて合格の実績が評価につながる法科大学院の現実が、理念的に特徴を持ち、チャレンジした法科大学院が、生き残りにくい現象としてはっきり現れたともいえるのではないでしょうか。
夜間授業については、特にそうした見方がなされています。司法試験対策にとらなければならない時間がとれず、そこに理念としての教育が行われることで、より「受からない」環境になるとの見方です。
もちろん、いうまでもありませんが、チャレンジしている法科大学院が悪いわけではありません。一発試験の旧司法試験に比べて、はるかに社会人がチャレンジしずらい現在の制度を考えれば、夜間授業そのものの理念は逆に尊重されるべきものです。
「両校は、夜間講座を開設し有職社会人に積極的に対応してきたほか、実務家教員を主体として実践的な教育を行ってきたという点でも共通性があり、統合することによりその特色をさらに優れたものにすることができる」
「統合後の法科大学院の名称は『桐蔭法科大学院』として、桐蔭横浜大学法科大学院の施設において、社会人をより積極的に受け入れ、有職者が自信をもって法曹になれる学習環境を持った法科大学院として法曹養成教育にあたっていく所存」
両校は、統合の共同声明で、さらにチャレンジを続ける意向をこんな風に語っています。彼らのこれまでの「失敗」と、今後の運命が示すものが、法科大学院制度の「失敗」につながっているという視点が必要だと思います。
投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
http://www.shihouwatch.com/
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伝えられる現実は、▽志願者が2004年度桐蔭横浜1022人、大宮1605人だったのが、11年度はそれぞれ81人、96人に減少▽同年度の入学者は桐蔭横浜38人(定員60人)、大宮27人(同70人)▽2010年の新司法試験合格率は桐蔭横浜が7.2%(6人)、大宮は10.1%(12人)で全国平均(25.4%)以下▽大宮は設立以来、毎年1億~3億円程度の赤字。桐蔭横浜も赤字が続いている状況――など。
法科大学院の統合は初めてですが、合格率の格差が生まれ、経営状態が悪化している現状からすれば、他人事ではない法科大学院はほかにもいくらもあるわけで、こうした統合・再編が進むという見通しも話題のタネにはなっています。
しかし、こうした現実もさることながら、今回の統合に弁護士が特別な見方をするのは、いうまでもなく、大宮法科大学院大は第二東京弁護士会が全面的にバックアップした、弁護士会肝いりの法科大学院だったからです。他にもみられるような、協力関係ではなく、いわば「弁護士会が弁護士を養成する」というコンセプトを明確にしていた法科大学院だったのです。
「第二東京弁護士会は、法曹一元の理想を掲げ、主導的に日本のロースクール構想をリードしてきた弁護士会です」
大宮法科大学院大学の「設置の趣旨」はこんな言葉から始まります。「新しい教育機関を創設し、現代の複雑化した問題を法的に解決できる能力を持った優秀な弁護士を育てること」がロースクールのあるべき姿であり、その姿を現実とするために、「このロースクール構想をリードしてきた」第二東京弁護士会が創設に大きくかかわった、のだと、誇らしげに書かれています。前記のコンセプトへの関係者の期待感がにじみ出ている感じがします。
設立当初、弁護士会のなかには、冷めた見方をする他の弁護士会会員もいて、必ずしも全会挙げてこのチャレンジに期待していたかは疑問ではありますが、ただ、少なくとも弁護士会関与の実験的な試みとして、注目していた会員は少なくなかったと思います。
さて、このチャレンジの「失敗」が意味するところは、ある意味、はっきりしています。つまり、現在の法科大学院制度が、「多様な人材確保」という目指す形になっていないということです。
桐蔭横浜、大宮両校とも、いずれも夜間授業を開講するなど、法学部以外の出身者や社会人経験のある人の法曹育成に力を入れていたとの評価がなされています。その2校の行き詰まりは、この制度がいかにそうした理念を成り立たせない現実を引きずっているかを示しています。
大宮は学部を持たずに、法科大学院単体で運営されていることや、桐蔭横浜は学部を持ちますが、まだ新しく、実績面で弱みも指摘されていたといった、個別の事情はありました。
しかし、やはり問題は合格率の話に行きついてしまいます。志望者は、合格率が確保されていれば行く、という。合格率を意識しても、受験対策では予備校化するといわれ、さりとて合格の実績が評価につながる法科大学院の現実が、理念的に特徴を持ち、チャレンジした法科大学院が、生き残りにくい現象としてはっきり現れたともいえるのではないでしょうか。
夜間授業については、特にそうした見方がなされています。司法試験対策にとらなければならない時間がとれず、そこに理念としての教育が行われることで、より「受からない」環境になるとの見方です。
もちろん、いうまでもありませんが、チャレンジしている法科大学院が悪いわけではありません。一発試験の旧司法試験に比べて、はるかに社会人がチャレンジしずらい現在の制度を考えれば、夜間授業そのものの理念は逆に尊重されるべきものです。
「両校は、夜間講座を開設し有職社会人に積極的に対応してきたほか、実務家教員を主体として実践的な教育を行ってきたという点でも共通性があり、統合することによりその特色をさらに優れたものにすることができる」
「統合後の法科大学院の名称は『桐蔭法科大学院』として、桐蔭横浜大学法科大学院の施設において、社会人をより積極的に受け入れ、有職者が自信をもって法曹になれる学習環境を持った法科大学院として法曹養成教育にあたっていく所存」
両校は、統合の共同声明で、さらにチャレンジを続ける意向をこんな風に語っています。彼らのこれまでの「失敗」と、今後の運命が示すものが、法科大学院制度の「失敗」につながっているという視点が必要だと思います。
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