弁護士の「伝統的な価値観」
以前にも紹介しましたが、2009年から2010年にかけて、経済誌・ビジネス誌が、次々に弁護士に関する特集企画を組みました。内容は、いずれも増員に伴う弁護士の経済的な異変にスポットライトを当てたものでした。このなかで、「週刊ダイヤモンド」が2009年8月29日号で組んだ特集「弁護士大激変!2万5041人の意外な実態」の中に、こんな見出しが打たれています。
「弁護士の本質を問う価値観の対立が激化」
広告の解禁、報酬の自由化、そして過払いバブル。特集記事はこの状況が悪徳弁護士の跳梁跋扈を生み、現にその被害者が出ていることに触れながら、それは弁護士間の、ある価値観の対立も浮き彫りにしたと紹介しています。
「『弁護士は社会正義のために働くべきであって儲けることを考えるべきではない』という伝統的な価値観に対して、『弁護士も商売なのだから儲けることは決して悪いことではない』という価値観が台頭している」
弁護士の激増、経済格差。大企業のM&A、海外進出に伴う数百人規模の大手法律事務所の誕生。初任給1000万円~1500万円という新人弁護士もいれば、就職先も見つからず年収200万円台の弁護士もいる現状。
「これでは従来の年間500人前後という超難関の司法試験をくぐり抜け、弁護士の誰もが食うに困らなかった時代の価値観は共有でない」
これは、経済誌の目線として、ある意味、バランスがとれている見方というべきかもしれません。増員や競争激化、それがもたらす弁護士のビジネス化そのものの負の部分について直視し、それを弁護士の「社会正義」への使命感を基軸した「伝統的な価値観」と対比して書いているからです。
弁護士がこれまで自らの保身のため、いわば「楽して儲ける環境」を維持してきたため、競争によって、大衆にもたらされるはずの利がもたらされていない、ということ一辺倒の描き方ではないということです。前者の「伝統的な価値観」とくくられているものは、弁護士が享受してきた「楽して儲ける環境」ではなく、「社会正義のために働く」環境ととれます。弁護士の競争と淘汰を求める側は、それを建て前として片付けますが、前記過払いバブルが生み出した弁護士の姿と並べたこの企画は、少なくともそういうスタンスではないと読めます。
ここで二つのことがポイントとして浮かび上がるように思います。一つは、この「伝統的な価値観」を持った弁護士と、台頭してきたとされる商売と割り切った価値観の弁護士、そのどちらが社会に満たされるのが、大衆にとって望ましいのかということ。もう一つは、その「伝統的な価値観」を追い詰めているのは、一体、何なのか、誰が何のためにやっているのか、ということです。
「弁護士が食うに困らなかった時代」を弁護士があぐらをかいていた時代、甘えていた時代とは、単純にくくりきれないものがそこにあります。弁護士自身が時代の流れとして受け入れているような自覚、またはこうした状況の先にもあくまで「市民」の利を強調するような弁護士の主張が、かえってこの「伝統的な価値観」とそれがもたらしてきた利の方を伝えにくくさせているような気すらします。
この価値観の対立、そしてある種の矛盾をはらんだ弁護士の姿を、この経済誌が取り上げたのち、前回の劇的な日弁連会長選挙がありました。「伝統的な価値観」が維持できなくなってきたことを憂う弁護士、「伝統的な価値観」で生きられないならば、「商売」を阻害しない環境を期待する弁護士が、さまざまな思惑や期待感のなかで、投票行動に及んだ結果であったというべきかもしれません。
まさに弁護士の、答えが見い出せない閉塞感が、ああいった前回のねじれたような結果を生み出したようにも思えます。そして、今回の選挙もまた、さらにその深刻さを反映したものになっている観があります。大衆にとって本当に望むべき弁護士の価値観とは何なのか、この選挙の行方とともに、われわれが考えなければいけないテーマはそこにあります。
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ただいま、「次期日弁連会長に求めるもの」「今、求められる弁護士」についてもご意見募集中!
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「弁護士の本質を問う価値観の対立が激化」
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「『弁護士は社会正義のために働くべきであって儲けることを考えるべきではない』という伝統的な価値観に対して、『弁護士も商売なのだから儲けることは決して悪いことではない』という価値観が台頭している」
弁護士の激増、経済格差。大企業のM&A、海外進出に伴う数百人規模の大手法律事務所の誕生。初任給1000万円~1500万円という新人弁護士もいれば、就職先も見つからず年収200万円台の弁護士もいる現状。
「これでは従来の年間500人前後という超難関の司法試験をくぐり抜け、弁護士の誰もが食うに困らなかった時代の価値観は共有でない」
これは、経済誌の目線として、ある意味、バランスがとれている見方というべきかもしれません。増員や競争激化、それがもたらす弁護士のビジネス化そのものの負の部分について直視し、それを弁護士の「社会正義」への使命感を基軸した「伝統的な価値観」と対比して書いているからです。
弁護士がこれまで自らの保身のため、いわば「楽して儲ける環境」を維持してきたため、競争によって、大衆にもたらされるはずの利がもたらされていない、ということ一辺倒の描き方ではないということです。前者の「伝統的な価値観」とくくられているものは、弁護士が享受してきた「楽して儲ける環境」ではなく、「社会正義のために働く」環境ととれます。弁護士の競争と淘汰を求める側は、それを建て前として片付けますが、前記過払いバブルが生み出した弁護士の姿と並べたこの企画は、少なくともそういうスタンスではないと読めます。
ここで二つのことがポイントとして浮かび上がるように思います。一つは、この「伝統的な価値観」を持った弁護士と、台頭してきたとされる商売と割り切った価値観の弁護士、そのどちらが社会に満たされるのが、大衆にとって望ましいのかということ。もう一つは、その「伝統的な価値観」を追い詰めているのは、一体、何なのか、誰が何のためにやっているのか、ということです。
「弁護士が食うに困らなかった時代」を弁護士があぐらをかいていた時代、甘えていた時代とは、単純にくくりきれないものがそこにあります。弁護士自身が時代の流れとして受け入れているような自覚、またはこうした状況の先にもあくまで「市民」の利を強調するような弁護士の主張が、かえってこの「伝統的な価値観」とそれがもたらしてきた利の方を伝えにくくさせているような気すらします。
この価値観の対立、そしてある種の矛盾をはらんだ弁護士の姿を、この経済誌が取り上げたのち、前回の劇的な日弁連会長選挙がありました。「伝統的な価値観」が維持できなくなってきたことを憂う弁護士、「伝統的な価値観」で生きられないならば、「商売」を阻害しない環境を期待する弁護士が、さまざまな思惑や期待感のなかで、投票行動に及んだ結果であったというべきかもしれません。
まさに弁護士の、答えが見い出せない閉塞感が、ああいった前回のねじれたような結果を生み出したようにも思えます。そして、今回の選挙もまた、さらにその深刻さを反映したものになっている観があります。大衆にとって本当に望むべき弁護士の価値観とは何なのか、この選挙の行方とともに、われわれが考えなければいけないテーマはそこにあります。
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