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    若手弁護士会長誕生を生み出すもの

     韓国のソウル地方弁護士会会長選で、35歳の若手が異例の当選を果たしたということが伝えられています(livedoor NEWS)。6人が立候補し、最多得票2人による決選投票で、全得票数のうち3分の1以上を獲得したそうで、背景には弁護士数増加による若手弁護士の労働環境悪化があり、その改善への若手の期待が彼の当選につながったようです。

     このニュースは、やはり同じような状況にある日本の弁護士会に被せてみたくなるものがあります。激増政策によって、世代的な勢力図が塗り変わっている日本の弁護士会で、大きなウエートを占め出している若手が発言力を増し、その期待を背負った人間がトップに押し上げられるということです。現に、会長選挙では、かつてでは考えられないほど、この層の票の流れを候補者は気にせざるを得なくもなっています。

     ただ、会長選出馬ということになると、問題はモチベーションです。端的にいって、この状況下で現実的に若手候補者は、何のために選挙に打って出ようと考えるのかということです。別の言い方をすれば、弁護士会に自らが立って、変革しようというような、そこまでの期待感が果たしてあるのか、そもそも会そのものへのかつてのような拠点意識があるかどうかの問題です。

     もっとも想像しやすい目的を挙げるとすれば、それは規制撤廃ということになるように思います。以前も書きましたように、若手が一致団結して、負担となっている高額の会費を値下げさせるという想像はできなくありません(「『若手』が弁護士会を牛耳る日」)。そして、もはや負担感の前に意義を感じられなくなってきているとする声が広がっている弁護士自治・強制加入についても、廃止論が一致した若手の世論になるかもしれません。

     韓国の若手会長も、その労働環境改善を掲げているようですが、日本で同様に、若手の期待を背負うとすれば、真っ先に考えられるのは、前記のような会員の負担軽減につながる弁護士会という存在の規制緩和というテーマのように思えます。

     ただ、逆に言ってしまえば、もはやそのくらいしか最大公約数的な若手会員の関心事となる会長選のテーマが考えられないことが、これが現実化しない理由にもなるように見えます。シングルイシューもシングルイシュー、しかもこの若手の期待感の先にあるのは、弁護士会の弱体化、あるいは存在感そのものをなくす方向になる政策と、それを背負う代表の誕生です。史上初めて会員の負担軽減を理由とした会務縮小を政策として進める執行部の誕生ともいえますが、そもそもなくてもいい、ないと有り難いという期待を背負った会長が、どんなスタンスに立つのか、それを考えれば、出馬するという選択になるのかという気にもなります。

     そして、もう一ついえば、そもそも規制緩和という内向きの負担軽減だけで、若手の状況がなんとかなるのかという問題があります。事件がない、足りないという根本的な問題の前に、弁護士会のトップに若手が就任して何ができるのか、そもそも弁護士会に何ができるのかという点で、会長に出馬する意欲と、それを強力に押し上げる期待感と支持が果たして生まれるのか、ということです。

     弁護士会が本来もっていたはすの社会的使命においても、会員の現実的な問題を解消するということにおいても、若手の拠点意識が高まらない現実を考えてしまうと、若手会長誕生の現実味はやはり薄らいでしまいます。


    ただいま、「弁護士会の会費」「弁護士自治と弁護士会の強制加入制度」についてもご意見募集中!
    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。http://www.shihouwatch.com/

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    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事

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    No title

    >接見拒否されないのは、警察官と拘置所職員の意識が高いからであって、弁護士に実力があるからではありません。
    弁護士会のおかげ、だとは思いませんけど。
    事実違うでしょうし。

    これまでの数々の接見国賠訴訟なんて無意味なんだろうね。

    過払専門事務所が先人が苦労して獲得した判例にタダ乗りしてもうけたのと同じ感覚なんでしょう。

    No title

    接見拒否されないのは、警察官と拘置所職員の意識が高いからであって、弁護士に実力があるからではありません。
    弁護士会のおかげ、だとは思いませんけど。
    事実違うでしょうし。

    あなたの発言の方が鼻持ちなりません。聞いていると日弁連がなければ仕事ができないかのように聞こえてしまいます。
    そこまで後見的な団体ではないことは全員が知っています。

    内から外から叩かれて弱体化ということですが、弱体どころか消えて無くなって欲しいと思います。その結果弁護士自体が社会に必要とされないということになれば、それはそれで一つの結論でしょう。

    組織の中で有能だと勘違いしているのはこの期に及んでも法科大学院を擁護している一部の弁護士でしょう。

    No title

    >接見拒否なんてされたこと一度もないし。

    こういうのを権利の上に眠るというのかな
    日々仕事ができるのを当たり前で自分の実力だと勘違いしているのでは

    組織の中の有能な人も独立して外へ出ると誰も相手にしないというのはよく聞く話

    弁護士会が外からも内からも叩かれて弱体化する労組と同じ運命に向かうのはもう止められないか

    No title

    予想屋様
    大型倒産案件は勝手が分かっている弁護士でないとハンドリングを間違えてとんでもない方向へ行くというご意見ですが、
    個別具体的な事例を挙げるのはどうかとも思いましたが、武富士の会社更生申立代理人がそのまま管財人になり、最も高額の提示をしたスポンサーを外して、韓国籍の企業をスポンサーにしようとした(武井一族の希望だったと思いますが)ところ、払込が出来ずにスポンサーのやり直しで、最初に一番高額の金額を提示した企業に、韓国籍の企業よりもさらに30億円も低い金額でスポンサー選定し、にも関わらず、配当率は変わりませんと言った弁護士は、あなたの言う、勝手が分かっていてハンドリングを間違えず、裁判所に嫌われない弁護士なのですか?

    No title

    まあどうでも良いことですが
    照会の過ちです。

    No title

    23条商会なんて、利用する意味あるの?回答がまともに返ってくるの?接見拒否なんてされたこと一度もないし。
    そんな理由しか年間50万~100万の弁護士会費の正当化理由としてあげられないのであれば、ますます、日弁連いらないじゃん、という話の方が正論にしか聞こえないですが。

    No title

    一弁護士さんの意見に,別に異論を唱えるつもりはないです。
    ただの,予想ですから。
    予想は外れるものです。

    >大型管財事件は,勝手が分かっている弁護士でないと,ハンドリングを間違えてとんでもない方向に行ってしまうことになりかねないので,裁判所は,訳の分からない弁護士にやらせるのは嫌なのだと思います。
    東京であれば,少額管財人名簿に登録して10年以上すればそれなりの事件が回ってくるようになるかもしれません。
    よく,管財事件の配点を巡って独禁法云々の話が出ることがありますが,東京では,少額管財制度になって一応ある程度は門は開けたかなという印象はあります(最近は,希望者が多くなりすぎて閉じつつありますが)。


    >一人の法律相談で済むのに、10人も20人も弁護士はべらして、全員のタイムチャージを法律相談料として請求する

    は,DDでもない限り,ちょっとありえないです。

    それはともかく,嫌なら,企業はそこを辞めて別の事務所に頼めばいいだけだと思うのですが,そうしないのは何らかの理由があるのだろうと思います。
    有名弁護士のバカ高い意見書より,近所の弁護士事務所の意見書でもいいのではないか(同じ弁護士の意見書でしょ?)とよく思うのですが,何故しないのでしょうか?

    >競争入札によって顧問先を決めるように圧力を掛けるだけで

    顧問先は存じ上げませんが,DDではビューティコンテストをやっているはずです。
    結局,競争入札で値段が安いところに決めた場合,パフォーマンスに難があるから,そういうことはできないのかなと思っています(公共事業でもありますよね)。
    DDはスピード勝負でやることはだいたい決まっているので,ビューティコンテストに馴染みやすいのでしょうか。

    >自分達は蚊帳の外だと思っている人たちも、本当に蚊帳の外なのかよく考えてみた方がよいのではないでしょうか。

    それはその通りかと思います。
    大事務所のエクイティーパートナーレベルであればともかく,それ以外は,明日は我が身です。

    任意加入の弁護士会が23条照会して回答してくれるの?
    接見拒否など刑事弁護活動の妨害されて力になってくれるの?
    今の弁護士会に不満があるにしてもなくしてしまうと会費が安くなる以上の損失があることを冷静に考えないとね。

    No title

    アッパーには関係ないなどという意見がありましたが、事実認識を誤っていると思います。
    まず、日弁連の中でも利益を誘導できる部門というのがあります。
    ここは一部の派閥の独占です。
    一番わかりやすいのが大型倒産案件の管財人はごく少数のグループがたらい回しにしています。これは裁判所への管財人の推薦を業務とする委員会の中で利潤の大きな大型倒産案件を独占していることに由来します。
    この独占権がまず日弁連の崩壊と共になくなります。
    今でも公正取引委員会が関心をもってもおかしくないと思いますが。

    次に、この倒産案件の事例で、高額の不動産を売却するときに、その不動産を扱う業者も一部の弁護士グループの顧問会社に限定されていると聞いています。
    つまり管財人として利潤を得る者、倒産物件の売却の過程で利益を得る者が、きちんと棲み分けされているということです。

    この利権が日弁連の崩壊と共になくなります。

    高所得弁護士層には関係ないなどという話にはならないでしょう。

    なんなら、一人の法律相談で済むのに、10人も20人も弁護士はべらして、全員のタイムチャージを法律相談料として請求するのはおかしいと、株主代表訴訟でも起こしてみたらどうなるでしょう?
    少なくとも、随意契約ではなく、競争入札によって顧問先を決めるように圧力を掛けるだけで、会社の経費としての弁護士費用は下がります。

    自分達は蚊帳の外だと思っている人たちも、本当に蚊帳の外なのかよく考えてみた方がよいのではないでしょうか。

    No title

    >いっそのこと、30代の日弁連会長にして、それを最後に日弁連を解体、任意団体にしてしまえばと思います。

    多くの弁護士が,いっその事,任意団体にしてしまえとか,会費を大幅に減額しろとか,と思っているかと思いますが,コレに舵を切ると,低層階級の弁護士は一層生活が苦しくなると思われます。街弁もです。

    任意団体化により,弁護士会に登録しない,あるいは,例えば,第三東京バーチャル弁護士会に登録する(例えば,年会費4000円)という選択をしたとします。
    このような選択をした場合,デメリットは,貧乏弁護士会の会員とのレッテルを貼られ,彼は,通常の弁護士会の会費も払えない弁護士であるとの推定が働くことです。
    その推定が働く弁護士に,まともな依頼者は依頼してこない気がします。
    もっとも,他の各弁護士会も追随し,会費を安くするかもしれません。そうすると,貧乏弁護士との推定が崩れ,貧乏レッテルを剥がせるかもしれません。

    また,弁護士会の任意団体化をした場合,何が起こるかというと,高額の弁護士費用が払えなくて登録を諦めていた有象無象の貧乏弁護士予備軍が,こぞって登録します。彼らはおそらく宅弁が主流でしょうが。
    当然,彼らに優良企業の依頼者は来ないでしょう。
    来るのは,電波系,電磁波系,アンダーグラウンダーなどバラエティー豊富です。ただ,このような人たちを相手に仕事をしても,決して,底辺からは抜けられることはないでしょう。ただ,間違えて,一般消費者が来るかもしれません。
    その間違えが生じる場合,需要(依頼者の数)を一定数と想定した場合,供給(貧乏弁護士予備軍の登録による弁護士の増大)過多になるので,多大な影響を受けるのは,一般消費者を相手にしていた層の街弁です。

    結局,
    優良企業の顧客を抱えた一部のアッパヤードの弁護士は,何も影響を受けませんが,他方,顧問先もなく,一般消費者を相手にしていた層の街弁は,今より弁護士数が増大するので,壊滅的な打撃を受けるような気がします。


    No title

    是非とも日本でも、派閥順送りみたいなふざけた日弁連会長選挙は辞めてもらいたいものです。一度は制度廃止への期待から宇都宮弁護士に票が集まり、会長になったにもかかわらず、期待を裏切られた失望からか、昨年の衆議院選挙のような反動票が自民党に集まったのと同じ現象が日弁連でも生じました。
    宇都宮弁護士には何も期待できません。いっそのこと、30代の日弁連会長にして、それを最後に日弁連を解体、任意団体にしてしまえばと思います。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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