「激増」を選択させた弁護士の中の期待感
批判を恐れずに、あえて露骨な言い方をすれば、司法改革「路線」を支持した弁護士のなかには、その先に明らかに弁護士としての経済的な妙味を見出していた、あるいは夢みていた方々が沢山いたと思います。わが国にやって来るとされた「事後救済社会」が描いたのは、被害が発生したのちに、市民が司法によって回復・救済される社会。それは見方を変えれば、市民が否応なく、弁護士のご厄介にならざるを得ない社会です。
誤用のような「法の支配」という言い方(「『法の支配』というイメージ」)とともに、弁護士が社会の隅々までいきわたらせようとする社会とは、事後救済社会が必然的にもたらす飛躍的な事件増加という描き方をしながら、現実的には、弁護士の増産によって事件が増えるはずの社会でもありました。弁護士が事件を創出する社会。一方当事者に弁護士がつけば、必然的に相手当事者にも弁護士がつかざる負えない式の、仕事創出の皮算用は、つとに「改革 」推進の論調の中で聞かれたことです。
こうした弁護士としての、経済的妙味あるいはそれに対する、漠然とした期待感が、それこそ当初、日弁連会長までが、政府の審議会で、司法試験年合格3000人方針に、「大丈夫」と太鼓判を押してしまうような、激増政策への楽観論に繋がった一つの要素であったと思います(「日弁連が『3000人』を受け入れた場面」)。そして、それが当時、その皮算用を薄々危なっかしいものと感じていた多くの弁護士会員をも、この路線の「賛同者」として駆り出させる役割を果たした一面は、確かにあったと言わざるを得ません。
私たちが忘れてはいけないのは、この弁護士の皮算用と期待感が支えたこの「改革」路線が、「市民のため」という旗印のもとに、推進されたことです。もちろん、そのことだけで、この路線の当不当をいえば、当然、その意図の善意性も含めて、間違ってはいなかった、市民アクセスや救済機会が広がった、ニーズに一定限度こたえられる成果が得られたという反論が聞かれそうです。また、一方で、事業者としての弁護士が、そうした「市民のため」になる「改革」に協力する、一つの動機づけとして、たとえそこに、前記したような経済的妙味と期待感が被せられたとしても、それが責められることなのか、という言い方もできるかもしれません。
ただ、それでも、といわなければなりません。どうしても、この一連の「改革」をめぐる現実に違和感をもってしまうのは、この「改革」が想定し、弁護士が妙味と期待感を被せたような、弁護士を必要とし、その出番を増やす社会を、果たして国民、市民は本当に求めているのか(求めていたのか)という根本的な疑念が消えないからにほかなりません(「弁護士 猪野亨のブログ」)。国民、市民に、それは問い掛けられることもなく、裁判員制度同様、これはあくまで「改革」を推進する側が、「あるべき」と既定し、期待した社会ではないのか、ということです。
いうまでもなく、現実的に広がっているのは、弁護士の皮算用、期待感とは大きく異なる社会です(「黒猫のつぶやき」)。事件は増えず、必要になるはずだった弁護士は仕事にあぶれている。弁護士が激増するとともに、あたかも市民が司法にお金を投入したくなるような、ニーズが劇的に増えることも ありませんでした。仮に弁護士を必要とするニーズが、社会のなかに存在していたとしても、無償性を期待する、その多くは、少なくとも前記皮算用や期待感とは大きくずれています。
この現実を直視すれば、実は前記疑念に対するこたえは既に出ているようにもとれます。社会の隅々に弁護士が登場する社会、お金を投入してまで、身近に弁護士にご厄介になる、ならざるを得ない社会を、国民、市民は求めていない――。こうみたとき、それでも弁護士必要社会を叫び、増員基調の路線のうえを進もうとする、弁護士会内「改革」推進派の姿勢を 私たちはどうみるべきでしょうか。夢は潰えたという弁護士もいますが、それでも期待感を未来に繋ごうとするかのような見方にも出会います。訴訟社会や弁護士に依存する社会を本当に選択するのか。依然として、そういう問い掛けを彼らはしようとしません。
彼らがしがみついてあるのは、本当に「市民のための改革」なのか。私たちが、彼らにそういう問い掛けをしなければなりません。
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【弁護士業】いわゆる「ブラック事務所(法律事務所)」の実態ついて情報を求めます。
【刑事司法】全弁協の保釈保証書発行事業について利用した感想、ご意見をお寄せ下さい。
【民事司法改革】民事司法改革のあり方について、意見を求めます。
【法曹養成】「予備試験」のあり方をめぐる議論について意見を求めます。
【弁護士の質】ベテラン弁護士による不祥事をどうご覧になりますか。
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誤用のような「法の支配」という言い方(「『法の支配』というイメージ」)とともに、弁護士が社会の隅々までいきわたらせようとする社会とは、事後救済社会が必然的にもたらす飛躍的な事件増加という描き方をしながら、現実的には、弁護士の増産によって事件が増えるはずの社会でもありました。弁護士が事件を創出する社会。一方当事者に弁護士がつけば、必然的に相手当事者にも弁護士がつかざる負えない式の、仕事創出の皮算用は、つとに「改革 」推進の論調の中で聞かれたことです。
こうした弁護士としての、経済的妙味あるいはそれに対する、漠然とした期待感が、それこそ当初、日弁連会長までが、政府の審議会で、司法試験年合格3000人方針に、「大丈夫」と太鼓判を押してしまうような、激増政策への楽観論に繋がった一つの要素であったと思います(「日弁連が『3000人』を受け入れた場面」)。そして、それが当時、その皮算用を薄々危なっかしいものと感じていた多くの弁護士会員をも、この路線の「賛同者」として駆り出させる役割を果たした一面は、確かにあったと言わざるを得ません。
私たちが忘れてはいけないのは、この弁護士の皮算用と期待感が支えたこの「改革」路線が、「市民のため」という旗印のもとに、推進されたことです。もちろん、そのことだけで、この路線の当不当をいえば、当然、その意図の善意性も含めて、間違ってはいなかった、市民アクセスや救済機会が広がった、ニーズに一定限度こたえられる成果が得られたという反論が聞かれそうです。また、一方で、事業者としての弁護士が、そうした「市民のため」になる「改革」に協力する、一つの動機づけとして、たとえそこに、前記したような経済的妙味と期待感が被せられたとしても、それが責められることなのか、という言い方もできるかもしれません。
ただ、それでも、といわなければなりません。どうしても、この一連の「改革」をめぐる現実に違和感をもってしまうのは、この「改革」が想定し、弁護士が妙味と期待感を被せたような、弁護士を必要とし、その出番を増やす社会を、果たして国民、市民は本当に求めているのか(求めていたのか)という根本的な疑念が消えないからにほかなりません(「弁護士 猪野亨のブログ」)。国民、市民に、それは問い掛けられることもなく、裁判員制度同様、これはあくまで「改革」を推進する側が、「あるべき」と既定し、期待した社会ではないのか、ということです。
いうまでもなく、現実的に広がっているのは、弁護士の皮算用、期待感とは大きく異なる社会です(「黒猫のつぶやき」)。事件は増えず、必要になるはずだった弁護士は仕事にあぶれている。弁護士が激増するとともに、あたかも市民が司法にお金を投入したくなるような、ニーズが劇的に増えることも ありませんでした。仮に弁護士を必要とするニーズが、社会のなかに存在していたとしても、無償性を期待する、その多くは、少なくとも前記皮算用や期待感とは大きくずれています。
この現実を直視すれば、実は前記疑念に対するこたえは既に出ているようにもとれます。社会の隅々に弁護士が登場する社会、お金を投入してまで、身近に弁護士にご厄介になる、ならざるを得ない社会を、国民、市民は求めていない――。こうみたとき、それでも弁護士必要社会を叫び、増員基調の路線のうえを進もうとする、弁護士会内「改革」推進派の姿勢を 私たちはどうみるべきでしょうか。夢は潰えたという弁護士もいますが、それでも期待感を未来に繋ごうとするかのような見方にも出会います。訴訟社会や弁護士に依存する社会を本当に選択するのか。依然として、そういう問い掛けを彼らはしようとしません。
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