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    「法テラス」の問題点について実務家の意見・報告募集

      「司法ウオッチ」では、日本司法支援センター(法テラス)の現状の問題点について、弁護士・司法書士からのご意見を募集します。

     2012年度末で、法テラスの契約弁護士は1万7863人、常勤弁護士は233人と、この6年間で前者は倍増、後者は9倍以上に増えました。数のうえでみても、この制度・組織と、それを支える弁護士とのかかわりは深くなりつつある半面、国選刑事弁護や民事家事事件処理にかかる弁護士報酬の基準額は、およそ弁護士業の採算ベースにのらない、という批判が、つとに弁護士の間では聞かれてきました。

     事務所経費を負担しないものでなければ採算はとれない、という声もあり、逆に弁護士が経済的に困窮する現実から、「それでも」という層のみがかかわっているといった見方までが、ネットなどで流れ始めています。優秀な弁護士たちが、既に「法テラス」に愛想を尽かして手を引いているといったイメージが広がるなかで、「法テラス」関与の弁護士の「質」に対する疑念までが利用者の声として聞かれます。

     2008年に岡山弁護士会所属の会員による国選弁護報酬の過大請求が発覚、その後の日弁連の調査で、被疑者国選について弁護士157人、計234件の過大請求が判明したことも、イメージ悪化につながっている面は否定できません。

     また、法律実務家からみて、法テラスの運用面での問題を指摘する声があります。生活保護受給者の償還免除の運用の不適正さなどでは、実質的に貧困層救済への道を閉ざしているという批判もあります(「yoshiko ikedaのブログ」 「仙台 坂野智憲の弁護士日誌」)。また、手続きに時間がかかる点や、前記した弁護士自己申告の国選弁護案件で、内容ではなく、接見や公判の回数を報酬の指標とすること自体を疑問視する見方があります。

     さらに、「法テラス」の法律相談事業が、弁護士会の相談離れを招いているという見方もあります。ただ、「法テラス」の震災法律援助を除いた法律相談援助件数は、2012年には27万1554件と、前年から約1万件減少。代理援助も10万5019件と2011年をピークに頭打ちという現象もあらわれており、改めてニーズの総体をどうみるか、という現実も突き付けられています。

     一方、「法テラス」利用者の「不満」のなかには、依然、そこでの具体的なアドバイスや解決を求めていたとする、「窓口」としての制度への理解不足や、より低額な費用・無償化を想定していたととれる声があります。その意味では、弁護士業務や司法への理解とともに、市民のなかにある法的ニーズに、「改革」が被せているような有償性がどこまで存在しているのか、といったテーマも浮き彫りにしているととれます。

     弁護士のなかにある報酬への「不満」に対して、あたかも不当な要求のようにいう意見も耳にしますが、「法テラス」自体が、社会にある無償性を期待する法的ニーズの受け皿として期待されてしまった結果として、弁護士業への要求のハードも上がってしまっているというとらえ方もできそうです。

     法律実務家の立場から、あなたは法テラスの現状の問題点をどうご覧になりますか。現状に対する疑問、批判、問題とされる現状報告などを「司法ウオッチ」までお寄せ下さい。お待ちしております。


     「司法ウオッチ」では、現在、以下のようなテーマで、ご意見を募集しています。よろしくお願い致します。
     【弁護士業】いわゆる「ブラック事務所(法律事務所)」の実態ついて情報を求めます。
     【刑事司法】全弁協の保釈保証書発行事業について利用した感想、ご意見をお寄せ下さい。
     【民事司法改革】民事司法改革のあり方について、意見を求めます。
     【法曹養成】「予備試験」のあり方をめぐる議論について意見を求めます。
     【弁護士の質】ベテラン弁護士による不祥事をどうご覧になりますか。
     【裁判員制度】裁判員制度は本当に必要だと思いますか

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    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事

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    No title

    社会の隅々まで法の光を届けるためには、役所等の公共機関を通じて無償または格安で法的サービスを提供する必要がある。
    相談に来るのを待っているのではなく、役所のどぶ板的な御用聞き活動により法的サービスを必要とする人に積極的にアプローチする。
    そして法的サービスが必要な人が見つかれば、役所が弁護士職員を使って自ら対応するか、法テラスにつなぐ。
    金を払わなくてもいいのなら潜在的な需要はある。
    就職先が見つからない法曹有資格者は役所に雇ってもらえばよい。
    仕事に困っている弁護士は法テラスと契約すればよい。
    少々デフォルメしていますが、司法改革が目指すところのひとつはこういう状況なのではないでしょうか。

    ちょうど山岸会長ブログに明石市長との対話が掲載されています。
    http://jfba.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-4903.html

    No title

    どうせ、債権回収も規程通りの費用は払ってもらえないのでしょう。
    逆に規程通りの報酬なら市民が黙っていないでしょう。
    弁護士登録したまま職員として公務員の給料をもらい、他の仕事が出来ない状況で、かつての明石市が顧問弁護士に支払っていた顧問料と弁護士会費を比べて前者の方が高ければ市民も納得するのでしょう。

    No title

    新聞報道によると、明石市では養育費の立替払い制度の導入を検討中とのことです(平成26年2月14日付神戸新聞)。
    未払いの養育費相当額を市が給付して、同額の債権を譲り受けるという制度(かねてより日弁連が提言していたもの)ではないかと思われます。
    譲り受けた債権の回収に当たるのは、市に雇われた弁護士となるのでしょうか。
    これからの弁護士は公務員的な活動が期待されているようです。

    なお、2つ下のコメントにある明石市長の主張は以下のとおり。
    「法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会(第1回)における意見の概要」
    http://www.moj.go.jp/content/000115177.pdf
    法テラスの積極活用も挙げられています。

    法テラスの話題から少々逸れてしまい、失礼しました。

    No title

    下記の明石市の施策は、要するに、弁護士を公務員と見なすのなら正しい選択ですが、弁護士は独立した事業者なので、その位置づけを明確にしないでこういうことを税金でやることが、果たして市民の理解を得られるのかどうか。
    ただ、市民は、「安く弁護士が使えますよ」と言われたら、乗るでしょうね。
    使われる弁護士側はたまったものではありませんが。

    No title

    弁護士職員の大量採用で話題となった兵庫県明石市では、来年度より法テラスの分室を市役所内に設けるそうです。
    弁護士職員による無料法律相談や離婚時の養育費に関する支援等の市のサービスを利用した市民が、そのまま法テラスに向かうという流れがシステム化されるわけです。
    この流れが一般的になれば、弁護士も国や地方自治体の影響下に入ってしまいそうですね。
    行政による民事問題への介入が進み、弁護士はお上に食わせてもらう立場になります。

    なお、明石市長は法務省「法曹有識者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会」の委員として「弁護士目線の職域拡大的発想から、国民目線の権利保障的発想へ」の発想の転換を唱え、「国民の「法的な支援を受ける権利」を実質的に保障するためには、法曹有資格者が社会の隅々において社会的な責任を果たすとともに、国や地方自治体などが体制の整備をしていくことが必要不可欠」と主張しています。
    法テラスの分室設置の件はこの主張に沿ったものですね。

    No title

    田舎の単位会に所属しておりますが、会務の関係で何かするときに
    法テラスと契約していることが前提となっていたりすることもありまして、
    契約してないと風当たりが強くなったりします。
    また、本当にお金がない人もいて、法テラスを利用しないと対処できない
    場合もあります。そういうときに、金がない方はお帰りくださいと言えれば
    いいのですが、なかなか言えないですね。

    でも、昨今では、ボランティアをする余裕はなくなってきているので
    今後は、法テラスを介した受任はしない方向で考えてます。

    皆さんの御指摘のように、法テラスの利用者に不誠実な方が多くて
    進め方に苦労するというのは、そのとおりですね。
    どこでもそうなんでしょうね。

    No title

    先日依頼を受けた人は法テラスありますけど、と伝えたら、そこの弁護士に相談してひどい目にあったそうです。

    なんかものすごく冷たいんですって。
    ちょっとおくさんきーた?
    法テラスの弁護士さんって質が悪いんですって。
    私は利用しないので知りませんけど。

    あ、文脈だと非弁に見えますかね?
    一応弁護士なんですけど、法テラスとは契約しておりませんですこと。
    おほほほほ。

    うちの事務所では、法テラスはお茶出さないとか、コピーは裏紙とか、そうやって少しでもコスト削ってます。だいたい、法テラスにしてくれと言いながら、破産で、友達に偏波弁済してたりすると、弁護士に払う金は無いけどそういうことはするんだねと、とてもイヤーな気分になります。お金払えなくないでしょ、という思いは、法テラスを使った弁護士が例外なく思ったことがあるのでは?
    いったことを守らない人も多いです。低所得層にはそれなりの理由があって、自己統制力に乏しい人が多いのだと思われます。こういう依頼者は、コントロールが難しいのです。
    法テラス事件が手間、という意見はよく聞きますが、その真相は、こういうところにあるのではないでしょうか。
    法テラスなくても、お金はみんなありますよ。ないふりしてるだけだと感じます。なぜそんな人たちのために、弁護士がイヤーな思いをしなくてはならないのか。

    No title

    価格が違うんだからサービスの中身が違うのは当たり前

    できる弁護士はわざわざ法テラスを使わない。それでもお客が来るから。
    法テラスを利用するということは、そうでもしないとお客がいないから。司法試験のレベルが下がり、若手の質が落ちたと言われるけれど、法テラスの利用層も若手。
    これからは、正規料金できちんとした弁護士か、法テラスかで、サービスの質も変わってくるのでは無いでしょうか。

    No title

    どうしてもわからないところです。

    法テラス案件を扱ったことはないです(厳密に言えば,公益活動義務との関係上,国選だけは,年1回程度しています。民事はないです)。
    それで高望みをしなければ何とかやっていけています。
    法テラスを希望する紹介客が来ることはまれにありますが,契約していないので,といって断っています。

    逆に,法テラス案件なんかに手を出すと,実入りがほぼないのに手間ばかりかかると思われ,赤字で多忙というのでは,事務所が回っていかないのではと思われるのですが。貧乏暇なしの典型のような気が・・・・。
    経験に基づくものではないので,単なる推測ですが,どうなんでしょうか?

    仮に,「法テラス案件以外に仕事が無いから仕方無く」というのなら,非常にまずい気がします。
    今後に広がりがほぼ見込めない客層を相手にする上に,毎年弁護士が増えるわけですから,早晩立ちいかなくなると思われます。

    No title

    かつては、法テラスの報酬が上がればそれで万事解決と考えていましたが、以下のべる点からそうではないことに気づきました。

    1 事務処理が非常に煩雑
     とくに近年、若手のみならず、法律相談で受けてきた事件が、法テラス対象事件となることが多いです。
     しかしながら、法テラスは、その申込手続やその他の付随的手続が事件処理以上に面倒であり、さらに、おそらく法テラス事務所は暇なのか、書式をやたらに増やす傾向があります。事件の種類に応じて、ほんのちょっと違う書式を使い分けさせられるので、そのたびに事務局が対応しなくてはならず、事務処理が非常に煩瑣です。また、地方事務所ごとに違うようですが、収入に関する書類などの付帯書類を、弁護士側で収集させられたりします。本来は、このあたりの書類収集は、法テラスの責任でやるべきことです。
     一方で、費用を建て替えるということで、依頼者が事件に対して熱意をもって対応しない(弁護士への丸投げ=これでは進められない)傾向が強く、なかなか連絡が取れない依頼者も少なくなく、依頼者への連絡だけでも一苦労、というはめに陥る傾向にあります。これが、事件処理遅滞扱いされ、「弁護士への苦情」につながることもあるようですが、弁護士側として連絡の取りようも無くなる人が少なくないという実情については、法テラスが責任をもって管理するべきであると考えます。
     このように、法テラス事件の事務処理は、通常事件の倍程度の手間がかかると考えておいたほうがよいでしょう(それでフィーが半額以下になったりしますから、まるで割に合いません)。
    2 法務省傘下ということによる、弁護士(会)への支配力を持たせることの危険性
     やたらと書式を増やして押し付けてくる、弁護士会に特定の分野に関する委員会の構成員名簿を出すよう迫ってくるなど、おそらく、弁護士の業務に更に深く関与して支配を試みようとする動きが昨今目立ちます。役所ですから、権限をさらに拡大したいという動きなのかもしれないので個人的には警戒すべき動きだと考えています。
    が、当の弁護士会は、地方事務所長を弁護士会から送り込んでいる関係もあってか、強く出られないようです。その意味で、すでに弁護士会は、法テラスに事実上支配されているのかもしれません。

    法テラスに支配されれば、価格支配権も持たれることになりますし(そもそも法律相談料は無料)、業務内容についても、ろくにわかっていない職員があれこれ口出ししてきて、本来的業務に割ける時間をさらに奪われることになるおそれなしとしません。

    このようなことから、近年、ある程度の成功を収めた弁護士から、法テラス契約をやめる・あるいは事実上法テラスを利用しないという動きが広がりつつあります。これは良いことだと思っていて、さらにその動きが加速してほしいと思っていますが、一方で、集客にあまり成功していない・もしくは篤志的な意味で法テラスの利用を継続する弁護士も少なくなく、後者ならまだよいのですが、前者を理由に法テラス利用を継続するとなれば、これはまさに法テラスに「仕事まで掴まれている」ことになり、これが広がると、法テラスによる弁護士支配はコンプリートします。

    若手を法テラス漬けにしない取り組みが大切です。

    No title

    法テラスは利用しない。それだけ!
    使う奴は自己責任かつ正札商売の健全弁護士の敵と見なさなくてはなりません。

    No title

    もうすぐ法曹有資格者とかいうよく分からない国家資格が出来て、法テラス業務の専従になるんでしょ?
    あれ?ちがうの?
    法律相談30分5000円とかいう業界相場に併せて、法テラスの料金を5000円で割って30分を掛けた時間だけしか業務に当たらないとすれば、別に弁護士はやっていけるのでは?
    その結果が市民の望む内容と一致するかどうかは知らないけど。
    まあ、私は他人事ですけどね。

    難しい問題ですね。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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