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    おかしなネット日弁連会長選挙

     現在、選挙戦が繰り広げられている日弁連会長選挙に立候補している中本和洋弁護士が、稲田朋美・自民党政調会長に献金していた問題を取り上げた弁護士ブログのエントリーが、日弁連選挙管理委員会の会長選挙規程違反の指摘で削除に追い込まれたことが、話題になっています(「街の弁護士日記」「Everyone says I love」 you !」)。選管の指摘というのは、今回の選挙から認められるようになったウェブサイトを使った選挙運動は、あくまで候補者が選挙期間中に選挙用に開設したものに認められているので(同56条の2)、前記ブログエントリーの内容は、この規程で認められていないもの、ということのようです。

     ただ、問題となっているのは、こうした日弁連選管の対応は、この期間、実質的にネット上での会員の候補者に対する自由な論評を制約するものではないか、という点です。今回の新たな日弁連のネット選挙への対応を、ネット社会に対応した「自由化」であると理解していた会員のなかには、驚きの声が広がりました。なぜならば、一般会員が各候補者の所信に対して、自由に論評することは、これまでの日弁連会長選挙期間中に、個々の弁護士ブログで自由に展開されていたからです。「自由化」どころか、これは実質、後退ではないのか、と。

     選管の対応は、各候補支援者が投票を呼び掛ける行為と、一般会員が各候補を自由に論評する行為を線引きせずに、「選挙運動」として禁止している格好です。もっとも、論評という以上は、肯定も否定もするわけで、一方の候補の否定がもう一方の候補の支援だ、という捉え方をする以上、区別がつくわけもありません。では、仮に両者のウィークポイントをついたり、逆に両者を持ち上げる行為ならば許されるのか、とか、その場合の基準あるいは程度は、選管の裁量なのかなど、さまざまな疑問も浮かんできます。ただ、それはそれでそもそも公正・公平な論評といえるかは疑問です。要は、「言及しない」方で、公平を担保するということが、果たしてあるべき日弁連会長選挙なのか、という話になります。

     これらについて日弁連選管に取材しました。ただ、その回答は、正直、そっけないものでした。選管は前記規程にしたがって該当すると思われる案件について、個別に指摘をしているが、私が尋ねた点への回答になるような対応の指針・基準を現在のところ示せない、それ以上は答えられない、と。つまり、どこまでの行為がだめなのかを規程の条文以上に提示できない、ということですから、当然、ダメの方で統一することになり、実質、後退というのが現実味を帯びてきます。

     ただ、選管の担当者は、今回が初めての対応であることを強調しており、そもそもこうした条文に則した対応が、実質、これまでネット上で展開が許されてきた自由な論評の制約であり、後退であるという認識そのものがなかったというのが現実のようで、今後議論の余地があるという受けとめ方にはとれました。

     しかし、これはやはり驚きです。ネットの利便性に注目した、新たな対応を取り入れながら、まさに自由に議論が展開できてきたネットの特質を、まるで知らなかったかのように、「選挙運動」の枠を形式的にあてはめて済むとみた日弁連の認識にです。自由な論評の制約といわれて、これがそれこそ表現の自由にかかわるような、非常に閉鎖的な、しかもネット上ではほとんど意味がないといっていいほどの対応に気が付いたようにとれるところです。

     さらに、今回の件で付け加えるのであれば、話題になっているのが、冒頭書いたように中本弁護士の献金問題にかかわっている点です。既にご存知の方も多いと思いますが、この件は既に一部マスコミが報道し(1月17日付け日刊ゲンダイ)、ネット上では現在でも目にできる情報です(「真実を探すブログ」)。SNSでも、弁護士を含め、多くの人がこの件に言及しています。しかも献金の事実そのものは、ご本人の中本弁護士が認めたうえで、見解を発表していることです(「中本和洋の見解」)。そもそもこの献金を妥当とみるか、日弁連会長としての適格性にかかわるのか、会員に問いかけることが、なぜ、「選挙違反」として削除されなければならないのか、という疑問は当然に生まれてくるところです。

     そのうえで、この件を消せ、という選管の対応には、このテーマを取り上げることそのものを阻みたい、なにかしらの意図が込めらていないかという、それこそ公正・公平という意味では、逆に一般会員の深読みを許すことになっているのも否定できないように思えます。基準・指針を示せないとなれば、なおさらといわなければなりません。

     いずれにしても、ネット社会への対応という意味では、踏み出した以上、なんとかしなければならない問題という認識が、日弁連には求められることになりそうです。


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    No title

    だから日本は戦犯政治だというのだ。中本は今の惨憺たる司法の実現を推し進めてきた旧執行部の一員。戦犯だった岸信介が総理大臣になり、平然と戦後政治の中枢に居座ったように、日弁連においても、久保井、本林、一弁の何とか?(忘れた)、中本の親分(強面の人相だけは覚えているが、こいつの名前も忘れた)、山岸、村越ら戦犯連中がずっと執行部に居座ってきたのだ。
     これほどひどくなったのが誰のせいか知らん顔して「俺が直す(世間が許す範囲で)」などと言い出す。ええ加減なもんや。投票率が30%以下とか前後の会がたくさんあり、いかに会員が白けているかがわかる。
     要するに、無責任社会なのよ。バックでこの体制を支えてきたのが、○○党と××党(別名「下駄の雪」)。何人かが会長の女房役の事務総長やった。ま、天皇の臨席を理由に国会の開会の日に断固出頭しなかったのに、今年からS位を先頭に誰よりも早く本会議場に出席、お言葉を有り難く賜ったのだから、時代も変わった訳よ。天皇制と自衛隊だけは、日本が絶滅しない限り、永久に廃止できないかもね。

    No title

    なんだかんだ言っても、結局主流派の勝ち!
    圧倒的勝利ではないか主流派は!

    No title

    東京弁護士会の副会長選挙ですが、定数6名に対して、
    主流派から6名、反主流派から1名の候補者が出て
    選挙になっています。

    そして、反主流派の候補者を批判するブログがアップされました。


    東京弁護士会副会長選挙における「理念なき立候補者」へ
    http://article9.jp/wordpress/?p=6329


    弁護士会の選管の運用は、候補者以外の者によるネット上の
    選挙運動を禁止しているはずですが、反主流派を批判して主流派を間接的に応援するブログは、「お咎めなし」なんでしょうかね。

    そもそも、選管の構成員が誰なのかも一般会員にはわかりませんので、場合によっては、主流派で選管の構成員が占められており、反主流派は誰も選管には入っていないかもしれません。

    No title

    >今回が初めての対応であることを強調しており
    だからなんだよネット上でこんな言い訳は通用しないんだよ
    って電話か

    >ネットの利便性に注目した(略)ネットの特質を、まるで知らなかったかのように
    こういうネットの自由度を妨害しかねない奴には、罵倒しながら学習させていったものだが(罵倒したほうが効果が高い)、リアル権力を振りかざすような奴は高確率で学習しないんだよな・・・
    そして「俺はお前より社会的地位が上なんだ、お前より偉いんだ」とか言い出しちゃう。ネット上じゃ関係ないっつーの。リアルでも付き合いがある関係ならともかく。

    No title

    こんな横暴がまかりとおってるとは。背筋が凍りつくようだわ。

    会費を浪費する老害どもに怒り心頭だが、こんなことまでやるようなら
    さっさと日弁連なぞ解散すべき。

    派閥とかほんとくだらん。中本なんぞに絶対投票しない。

    No title

    稲田さんと中本さんは、自分らこそ、中東や尖閣で、平和維持活動や防衛活動にあったらええんと違う?

    彼らとその家族は、貧困ゆえに自衛隊に入る、なんてことは、絶対にない。偉い人は、いつだって、安全な場所で、のへのへとしている。それこそ、東京大空襲のときに、帝国ホテル(敗戦後にGHQが本部とすることが、戦時中に決まっていたので、アメリカ軍による空爆の標的から外されていた)に逃げ込んで馬殷門食っていた卑怯な精神構造は、日本のエスタブリッシュメント(既得権益)のDNAに、しっかりと組み込まれている。

    上に立ってあおる人たちは、現場で命をリスクにさらしてこい。

    弁護士を含めた国民も、日本で上に立つ人が馬鹿なことは百も承知しているだろうから、スイスの「民間防衛」などをしっかり読み込んで、対策を建てることが必要です。

    No title

    日弁連も日本社会のまさに縮図。戦犯が何の責任もとらずに戦後日本を牛耳ったのと全く同じ構図。「3000人増員、法科大学院マンセー」で司法を無茶苦茶にした旧執行部が何ら恥じることなく「1500人目指してます」などとシレッと宣うて順送りに執行部に居座る図式。
     要するに日本は誰も責任をとらない無責任社会。さんざほら吹いたN坊弁護士も弁護士バッジ外してあの世にサヨナラしてもうた(関西弁)。
     しかも、それを操縦しているのが(昔からかな?)今や保守の仲間入りした隠れ○党らしい。今度の政治オンチのN に対しても裏からをご指導くださるそうな。

    No title

    今の日弁連は中国共産党と同レベルですね。日弁連が自由と正義を語るのは烏滸がましいですな。

    一生懸命勉強して司法試験に受かったのに、主流派による身勝手な横暴政治を目の当たりにするなんて、本当に馬鹿馬鹿しい。自分の人生って何だったんだろうと思えてくる。虚しすぎるわ。

    No title

    他にも削除要請された弁護士のブログはあるようですよ
    http://ameblo.jp/minamikazuyuki/entry-12121554202.html?timestamp=1453950450

    ツイッターでもいろいろ言われていますが、拡散されていたり、弁護士以外の(主殿のような)ブログで言われたらそっちの対処はどうするんだろ?
    とりま、主殿のブログにも日弁連から何か連絡がきたら興味深い。どれだけお前ら暇なんかと。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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