京都弁、「法科大学院」会員アンケート結果から見えるもの
法科大学院の現状を弁護士はどうみているのかーー。それを知るための貴重な資料となる会員アンケート調査の結果を、先ごろ京都弁護士会がまとめ、その報告をかねたシンポジウムが1日、京都で行われました。当日は、同会の白浜徹朗・法曹養成制度委員会委員長からの報告に続き、森山文昭弁護士が制度の現状と政府構想の問題点などについて、私が司法ウォッチャーの立場から問題提起を含めた講演をそれぞれ行いました。
ここ数年、講演などで各地の弁護士会に招かれると、担当の弁護士会関係者からは、法曹人口問題よりも法科大学院制度問題は、弁護士会のシンポや集会ではるかに取り上げにくいテーマであるという話を異口同音に聞くことがあり、講演内容に一定の配慮を求められたことも度々ありました。この問題について、会内の世論状況は、それだけ分裂しているということです。
そのなかで京都弁護士会がこの問題で、先進的ともいえる取り組みしている背景には、他の弁護士会に比べ、管轄内に多くの法科大学院を抱え、その教育に関与している会員が多いという背景もあります。調査は全会員730人を対象に行われ、回答は91名で回答率は12.5%。この種の会員アンケートとしては、比較的高い回答率になったのも、そうした同会の事情が影響したとみることもできます。
いくつか注目できる結果を抜き出すと、以下のようになります。
① 法科大学院改革は必要が全体の85.1%、法科大学院での指導経験者の91.4%、66期以降92.8%。
② 未修コースはそのままでよいが全体49.4%、法科大学院修了者68.0%。未修者に法的素養を問うべきが全体で34.7%、非修了者で47.5%、修了者24.0%。
③ カリキュラム、指導体制を変える必要ありが全体57.9%、修了者63.0%。
④ 受験指導をよしとすべきが全体60.8%、修了生66.0%。
⑤ 法科大学院修了を司法試験の受験資格とする制度を外すべき全体55.9%、未修了者74.4%、修了者40.0%、66期以降21.4%、今のままでよい全体34.4%、未修了者16.2%、修了者50.0%、66期以降64.2%。
⑥ 学費を安くすべき全体72.0%、修了者70.0%、66期以降85.7%。
⑦ 法科大学院の前期修習の代替は無理があるが全体78.8%、修了者79.5%、
⑧ 予備試験制限反対は全体66.2%、修了者60.0%、66期以降50.0%。分からないが同期以降50%。
⑨ インハウスを視野に入れたカリキュラムを充実させるべきが、全体61.4%、修了者72.3%、66期以降69.2%。
弁護士会内に法科大学院制度の失敗という見方や廃止論もあるなかで、今回の京都弁護士会のスタンスの特徴は、あくまで一旦「改革」という視点に立ってみるというところにありました。私は講演で、その場合、やはり一番の基本的な問題は「改革」の射程であり、その最も重要なポイントは、修了の受験要件化という強制化の扱いではないか、と話しました。
いうまでもなく、国の「改革」の方向も、推進派大マスコミもこの点はノータッチであり、そもそも法科大学院関係者の多くが制度=強制化で、理念の正しさを掲げながらも、これが外れた時点で事実上制度は終わると考えています。一方で、法曹界にとって現在最も深刻な問題であるはずの志望者減は、弁護士の経済環境の根本的解決が必要であり、同時に法科大学院が制度として残るには、本来、カネと時間をかけるだけの突出した「価値」を、志望者に示さなければならないはずです。この制度は、発足時からの「利用されない脅威」によって強制化に拠ってきた本音をはらんでいるといえます。
大学がこの制度理念の正しさを時間をかけてでも、社会に実証していくというならば、それはよいとしても、これ以上、強制化を続けることは、その間、志望者減が止まらないリスクがあるだけでなく、もはや多くの人材から適材を選抜する法曹養成の目的から離れたものになる。もし、「改革」という立場であるならば、受験要件化は、極めて現実的なポイントだという趣旨の問題提起をしました。
そうした視点で、京都弁護士会の結果をみると、法科大学院修了、未修了にかかわらず、制度に対する共通の問題意識の方向がみられるなかで、最も気になるのは、やはり受験要件化の扱いについてです。これの存続に対して、両者の間で明らかな捉え方の違いが読みとれ、修了者はこれを支持する見方が強く、しかも最近の修了者に高いその傾向がみられるからです。
この傾向について、ある調査担当者は、予備試験組合格者への社会的評価の高まりが関係しているのではないか、という見方を示しました。最近、法科大学院修了組合格者との対比において、合格率においても、企業担当者など評価においても、予備試験組が凌駕しているという情報が伝えられていることで、自らが通過したルートを擁護する心理が働いている、ということです(司法ウオッチ「編集長コラム『飛耳長目』~法科大学院、『無用』という実績への視線」)。予備試験制限に対する66期以降の微妙な反応も、それを裏付けているようにみえます。
2015年の「弁護士白書」によれば、既に新司法試験に合格して弁護士になった人(新60期~67期)の数は、前年度末で1万2832人。その時点の日弁連会員数でみても、既に日本の弁護士の3人に1人が「改革」の新制度で誕生しています。そうしたなかで、最近、弁護士会のなかから、この状況が法科大学院制度をめぐる会内論調を大きく変えていくという声が聞こえてきます。要は、法科大学院修了会員の割合が増えることで、より制度擁護論に会内世論が傾斜する、さらにいえば、廃止論を含めた議論がよりできない環境になるとの見方です。
今回の結果には、その状況を予感させるものでもありますが、それだけに受験要件化をめぐる議論は、今後さらに注視する必要があるように思います。
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ここ数年、講演などで各地の弁護士会に招かれると、担当の弁護士会関係者からは、法曹人口問題よりも法科大学院制度問題は、弁護士会のシンポや集会ではるかに取り上げにくいテーマであるという話を異口同音に聞くことがあり、講演内容に一定の配慮を求められたことも度々ありました。この問題について、会内の世論状況は、それだけ分裂しているということです。
そのなかで京都弁護士会がこの問題で、先進的ともいえる取り組みしている背景には、他の弁護士会に比べ、管轄内に多くの法科大学院を抱え、その教育に関与している会員が多いという背景もあります。調査は全会員730人を対象に行われ、回答は91名で回答率は12.5%。この種の会員アンケートとしては、比較的高い回答率になったのも、そうした同会の事情が影響したとみることもできます。
いくつか注目できる結果を抜き出すと、以下のようになります。
① 法科大学院改革は必要が全体の85.1%、法科大学院での指導経験者の91.4%、66期以降92.8%。
② 未修コースはそのままでよいが全体49.4%、法科大学院修了者68.0%。未修者に法的素養を問うべきが全体で34.7%、非修了者で47.5%、修了者24.0%。
③ カリキュラム、指導体制を変える必要ありが全体57.9%、修了者63.0%。
④ 受験指導をよしとすべきが全体60.8%、修了生66.0%。
⑤ 法科大学院修了を司法試験の受験資格とする制度を外すべき全体55.9%、未修了者74.4%、修了者40.0%、66期以降21.4%、今のままでよい全体34.4%、未修了者16.2%、修了者50.0%、66期以降64.2%。
⑥ 学費を安くすべき全体72.0%、修了者70.0%、66期以降85.7%。
⑦ 法科大学院の前期修習の代替は無理があるが全体78.8%、修了者79.5%、
⑧ 予備試験制限反対は全体66.2%、修了者60.0%、66期以降50.0%。分からないが同期以降50%。
⑨ インハウスを視野に入れたカリキュラムを充実させるべきが、全体61.4%、修了者72.3%、66期以降69.2%。
弁護士会内に法科大学院制度の失敗という見方や廃止論もあるなかで、今回の京都弁護士会のスタンスの特徴は、あくまで一旦「改革」という視点に立ってみるというところにありました。私は講演で、その場合、やはり一番の基本的な問題は「改革」の射程であり、その最も重要なポイントは、修了の受験要件化という強制化の扱いではないか、と話しました。
いうまでもなく、国の「改革」の方向も、推進派大マスコミもこの点はノータッチであり、そもそも法科大学院関係者の多くが制度=強制化で、理念の正しさを掲げながらも、これが外れた時点で事実上制度は終わると考えています。一方で、法曹界にとって現在最も深刻な問題であるはずの志望者減は、弁護士の経済環境の根本的解決が必要であり、同時に法科大学院が制度として残るには、本来、カネと時間をかけるだけの突出した「価値」を、志望者に示さなければならないはずです。この制度は、発足時からの「利用されない脅威」によって強制化に拠ってきた本音をはらんでいるといえます。
大学がこの制度理念の正しさを時間をかけてでも、社会に実証していくというならば、それはよいとしても、これ以上、強制化を続けることは、その間、志望者減が止まらないリスクがあるだけでなく、もはや多くの人材から適材を選抜する法曹養成の目的から離れたものになる。もし、「改革」という立場であるならば、受験要件化は、極めて現実的なポイントだという趣旨の問題提起をしました。
そうした視点で、京都弁護士会の結果をみると、法科大学院修了、未修了にかかわらず、制度に対する共通の問題意識の方向がみられるなかで、最も気になるのは、やはり受験要件化の扱いについてです。これの存続に対して、両者の間で明らかな捉え方の違いが読みとれ、修了者はこれを支持する見方が強く、しかも最近の修了者に高いその傾向がみられるからです。
この傾向について、ある調査担当者は、予備試験組合格者への社会的評価の高まりが関係しているのではないか、という見方を示しました。最近、法科大学院修了組合格者との対比において、合格率においても、企業担当者など評価においても、予備試験組が凌駕しているという情報が伝えられていることで、自らが通過したルートを擁護する心理が働いている、ということです(司法ウオッチ「編集長コラム『飛耳長目』~法科大学院、『無用』という実績への視線」)。予備試験制限に対する66期以降の微妙な反応も、それを裏付けているようにみえます。
2015年の「弁護士白書」によれば、既に新司法試験に合格して弁護士になった人(新60期~67期)の数は、前年度末で1万2832人。その時点の日弁連会員数でみても、既に日本の弁護士の3人に1人が「改革」の新制度で誕生しています。そうしたなかで、最近、弁護士会のなかから、この状況が法科大学院制度をめぐる会内論調を大きく変えていくという声が聞こえてきます。要は、法科大学院修了会員の割合が増えることで、より制度擁護論に会内世論が傾斜する、さらにいえば、廃止論を含めた議論がよりできない環境になるとの見方です。
今回の結果には、その状況を予感させるものでもありますが、それだけに受験要件化をめぐる議論は、今後さらに注視する必要があるように思います。
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